こんにちは!
テニスプレーヤーなら、誰もが一度は夢見るショットがあります。
ウィンブルドンのセンターコートで、ロジャー・フェデラーやニック・キリオスが見せる、あの魔法のような一撃。
そう、「股抜きショット」です。
相手の厳しいロブに必死で食らいつき、背中を向けたまま股の間から鮮やかなパッシングショットを決める…。
決まった瞬間の会場のどよめきと大歓声。
あれこそが、テニスというスポーツにおける最高のエンターテインメントの一つだと言えるでしょう。
しかし、多くのスクール生の方やアマチュアプレーヤーの方は、こう思って諦めてしまっています。
「あれはプロだからできる神業でしょ?」
「自分がやったら、自分の足をラケットで叩きそうで怖い…」
「運動神経が良くないと無理だ」
断言します。
それは大きな誤解です。
実は、股抜きショットは「運動神経」や「センス」だけで打つものではありません。
正しい「手順」と「理屈」さえ分かれば、テニスを始めたばかりの初心者の方でも、あるいは年配の方でも、驚くほど簡単に打てるようになるショットなのです。
今回は、私のYouTubeチャンネルで公開している動画「【テニス 股抜きショット】誰でも簡単に打てるようになります」のエッセンスを余すところなく文章化し、さらにブログならではの深い解説を加えてお届けします。
この記事を読み終わる頃には、あなたの頭の中にある「股抜き=不可能」という壁は消え去り、「早くコートで試したい!」というワクワク感でいっぱいになっているはずです。
目次
第1章:なぜ、あなたは「股抜きショット」が打てないのか?
練習法に入る前に、まずは「なぜ失敗するのか」という原因を解明しましょう。
失敗の原因を知ることが、成功への第一歩です。
最大の難関は「追い越し(おいこし)」にある
股抜きショットを難しくしている最大の要因。
それは「ボールを追い越す」という動作です。
通常の股抜きショットのシチュエーションを想像してみてください。
- 相手にロブを上げられる。
- 後ろ向きで全速力で走る。
- 飛んできたボールを追い越す。
- ボールが自分の股の下(足の長さの範囲内)にある一瞬のタイミングを計る。
- スイングする。
この一連の動作の中で、最も難易度が高いのが「3」と「4」の融合です。
自分の足元という非常に狭い空間に、走りながらタイミングを合わせてボールを呼び込む。
これは確かに高度な空間認識能力が求められます。
多くの人は、ボールを追い越せていない(ボールが体の横や前にある)状態で無理やり股を通そうとしたり、走りながらの距離感が掴めずに空振りしたりしてしまいます。
「分解」すれば簡単になる
そこで私が提案するメソッドは、この難しい工程を「分解」することです。
いきなり全部やろうとするから難しいのです。
「ボールを追い越す動き」と「股の下で打つスイング」を切り離して、まずはスイングの感覚だけを養う。 極端な話、「追い越さなくても打てる」練習から始めれば良いのです。
「追い越さない股抜きなんて、股抜きじゃないじゃん!」と思われるかもしれませんが、まずは騙されたと思って読み進めてください。
この逆転の発想こそが、習得への近道なのです。
第2章:これだけは絶対条件!「グリップ」の秘密
練習を始める前に、一つだけ絶対に守っていただきたいルールがあります。
それは、ラケットの握り方(グリップ)です。
グリップは必ず「薄く」握る
股抜きショットを打つ時は、必ず「コンチネンタルグリップ(包丁握り)」のような薄いグリップで握ってください。
普段のストロークが厚い握り(イースタン・ウエスタングリップなど)の人も、股抜きの瞬間だけはグリップチェンジが必要です。
なぜ「厚いグリップ」ではダメなのか?
厚いグリップで握ったまま、ラケットを股の下に通そうとしてみてください。
手首の構造上、ラケット面が地面の方を向いてしまったり、あるいは自分のスネや地面にフレームが当たってしまったりしませんか?
股抜きショットは、「自分の背中側」でインパクトするショットです。
背中側でボールを飛ばすための面を作るには、薄いグリップでないと手首の可動域が確保できません。厚いグリップのまま無理やり打とうとすると、窮屈な体勢になり、物理的にボールを飛ばすことができないのです。
まずはラケットを包丁のように持ち、リラックスして構える。これがスタートラインです。
第3章:ステップ1「見えない場所で打つ」感覚を養う
それでは具体的な練習に入りましょう。 まずは走る必要はありません。その場に立ったままでOKです。
「背中側」でのインパクトに慣れる
股抜きショットの怖さは、「ボールが見えない(見えにくい)」ことにあります。
普段のテニスは目の前でボールを打ちますが、股抜きは自分の体の真下、あるいは後ろで打ちます。
まずは薄いグリップでラケットを持ち、自分の股の下(背中側)でセルフ手出しのボールを打ってみて下さい。
「あ、ここで打つんだな」という位置関係を、目ではなく「感覚」で覚えます。
どこに飛んでも構いません。空振りしても構いません。 「見えていないところ(背中側)でラケットとボールが当たる」という非日常的な体験を、脳にインプットさせる作業です。
第4章:ステップ2「追い越さない」股抜き練習
ここからが、このメソッドの真骨頂です。 多くの人が挫折する「走りながら」の要素を完全に排除します。
最初から「またいだ状態」で作る
通常の股抜きは「走って追い越してまたぐ」ですが、このステップでは「最初からボールが自分の後ろにある状態」を作ってしまいます。
【練習方法】
- ショートラリー、または手出しの球出しをお願いします。
- 自分の足元付近、あるいは少し後ろにボールをバウンドさせてもらいます。
- あなたは動きません(走りません)。
- バウンドしたボールが自分の股の下に来るように、その場で足を広げて待ちます。
- ボールが股の下を通る瞬間に、ラケットで「ポン」と弾きます。
これはいわば「ニセ股抜き」です。自分は走っていないので、ボールを追い越してすら いません。 しかし、インパクトの瞬間の形は、本物の股抜きショットと全く同じなのです。
この練習のメリット
この練習を繰り返すことで、以下の感覚が養われます。
- 打点の位置: 「あ、思ったより後ろで打つんだな」と分かります。
- 恐怖心の克服: 走っていないので、自分の足にぶつけるリスクが低く、安心して振れます。
- 面感覚: 薄いグリップでどう面を作ればボールが前に飛ぶかが分かります。
動画の中でも、実際にこの練習をしていますが、旗から見ると「またいで待っているだけ」に見えると思います。
しかし、この「待って打つ」感覚こそが、後々走って打つ時に生きてくるのです。
第5章:ステップ3「横入り(よこはいり)」の魔法
静止状態でのインパクトに慣れてきたら、いよいよ動きをつけていきます。
しかし、ここでもプロのような「真後ろから一直線に走って打つ」方法は推奨しません。
もっと簡単で、成功率が高い方法があります。
それが、「横入り(よこはいり)」です。
「一直線」は難しい
ボールの軌道上の真後ろを走って追いかけると、ボールとの距離感が非常に掴みにくくなります。
ボールが自分のお尻に当たってしまったり、追い越しすぎてしまったりするミスが多発します。
「横からスッと入る」テクニック
そこで、ボールの軌道に対して少し横側を走り、追い越した瞬間に横からスッと割り込むように入るのです。
【練習方法】
- ロブのような少し高めのボールを出してもらいます。
- ボールの横を走って追いかけます。
- ボールがバウンドし、頂点から落ちてくるのを待ちます。
- ボールを追い越した地点で、横からまたぐように体勢を作ります。
- 落ちてくるボールを股の下で打ちます。
イメージとしては、行列に横から割り込むような感覚です。
「ボールを追い越して、待ち構えて、落ちてきたところを打つ」 このリズムです。
「待つ」余裕が生まれる
この「横入り」メソッドの最大の利点は、ボールを待てることです。
一直線に走ると、ボールと自分が並走してしまい、一瞬のタイミングで打たなければなりません。
しかし、横から入ることで、ボールがバウンドして落ちてくる軌道を冷静に見る余裕が生まれます。
「1回追い越してしまえば、あとは落ちてくるのを待って打つだけ」。
この心理的な余裕が、成功率を劇的に高めます。
第6章:実践での活用と「見せ方」のコツ
ここまで来れば、あなたはもう股抜きショットが打てるようになっています。
最後に、これを実際のコートでどう使い、どう「魅せる」かについてお話ししましょう。
どんな時に使う?
基本的には、浅いロブです。
余裕を持って追いつけるロブに対して使います。
あくまでパフォーマンスだと割り切りって、股抜きを使わなかったらもっと精度高い返球ができるところを、敢えて股抜きするというイメージです。
股抜きショットでポイントを取るのが目的ではなく、股抜きショットが出来るくらいテニスのレベルが高い!と思わせる事が目的になります。
「ニセ股抜き」でも十分かっこいい
実は、完全にプロと同じフォームでなくても、ステップ2や3で練習した「横入り」のフォームでも、相手から見れば立派な「股抜きショット」に見えます。
「すごい!今のどうやったの?」 と言われること間違いなしです。
テニスは相手との駆け引きのスポーツですが、同時に「楽しむ」スポーツでもあります。
遊び心を持って、リラックスしてトライすることが、結果的に良いショットに繋がります。
第7章:よくある質問と解決策 (Q&A)
動画のコメントや、実際のレッスンでよく聞かれる質問にお答えします。
Q1. ラケットが足に当たりそうで怖いです。 A. 「ガニ股」になりましょう。 足を閉じていては打てません。インパクトの瞬間は、大げさなくらい足を広げてください。そして、ラケットヘッドを地面スレスレに通すイメージを持つと、スネに当たることはありません。ステップ1の「止まって打つ」練習で、足に当たらない軌道を確認してください。
Q2. ボールが真下に叩きつけられてしまいます。 A. 手首のスナップが足りていません。 ボールがネットを越えず、自分の足元に叩きつけられてしまう場合は、ラケット面が下を向いています。薄いグリップで握り、インパクトの瞬間に手首をクイッと背中側に反らす(スナップを使う)ことで、ボールを上に弾き飛ばすことができます。
Q3. そもそもボールに追いつけません。 A. 早めの判断が必要です。 股抜きショットは「準備」が命です。「あ、ロブだ!」と思ったら、躊躇せずに後ろを向いて全力ダッシュしましょう。ボールを見ながら後ずさりするのではなく、背中を向けて走るのがポイントです。
まとめ:股抜きショットは「感覚」の習得ゲーム
いかがでしたでしょうか。 「股抜きショット=選ばれし者の技」というイメージは払拭されましたか?
今回のメソッドをまとめると、以下のようになります。
- グリップは必ず「薄く(コンチネンタル)」握る。
- まずは走らず、背中側で打つ「ニセ股抜き」でインパクト位置を覚える。
- 走る時は「横入り(よこはいり)」でボールを追い越し、落ちてくるのを待つ。
この段階を踏めば、運動神経に関係なく、誰でも必ず打てるようになります。
テニスコーチとして25年以上指導してきましたが、生徒さんが初めて股抜きショットを成功させた時の笑顔は、本当に輝いています。
「できた!」「当たった!」という純粋な喜び。
それはテニスを長く続けるための大切なエネルギー源です。
次の練習では、ぜひ恥ずかしがらずにトライしてみてください。
ショートラリーの最中に、遊び半分で自分の足元のボールをまたいでみる。
そこからあなたの「スーパーショット」への道は始まっています。
もし、練習中にうまく打てたら、心の中でガッツポーズをしてください。
そして、いつか試合で決める日をイメージして、楽しみながら練習を続けていきましょう!
あなたのテニスライフが、この「遊び心」溢れるショットでさらに豊かになることを願っています。
動画でも実際の動きを解説していますので、文章と合わせてイメージトレーニングに活用してくださいね!
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