テニスのシングルスで「もっと楽に勝ちたい」「自滅を減らしたい」と悩んでいるあなたへ。
私は以前、YouTubeチャンネル「テニ紡」で『【テニス】【シングル】フォアストロークを使った無理が無く効率的なゲーム展開方法』という動画を公開しました。
多くの方にご視聴いただき、本当にありがとうございます!
あの動画では、私の実戦経験に基づいた「試合を有利に進めるための秘訣」をギュッと凝縮してご紹介しましたが、時間の制約もあり、どうしても語り尽くせなかった細かな心構えや、戦術の深い意図がありました。
この記事は、その動画内容をさらに掘り下げ、「なぜ、あの展開が有効なのか」という背景にある戦略的な思考や、試合中の具体的なメンタルコントロールの方法までを、ブログ記事としてお伝えしていきます。
この記事を読み終える頃には、次の試合が待ち遠しくなっているはずです。
目次
試合の序盤、なぜ私は「攻めない」選択をするのか?
まず最初に、皆さんに試合の入り方について改めて考えていただきたいのです。
皆さんは試合当日、特に大会の最初の試合に臨むとき、どのような心境でしょうか?
「絶対に勝つぞ」という意気込みがある一方で、緊張で体が硬くなっていたり、普段通りのスイングができるか不安だったりするのが正直なところだと思います。
これは、プロでもアマチュアでも共通する課題です。
特にテニスでは、日によってコートのサーフェス(表面)が違ったり、使用するボールのメーカーや質感が違ったりと、アジャストしなければならない要素が多すぎます。
体が十分に温まっていない状況で、いきなり「完璧なショット」を求めるとどうなるか。
それは、「自滅」という最悪の結果を招きかねません。
多くのプレーヤーは、最初から100%の力でエースを狙おうとしますが、体がついてこない状態ではミスが増えます。
ミスが増えれば精神的に焦りが生まれ、その焦りがさらに体を硬くし、またミスを呼ぶという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
私が動画で伝えたかったことの一つは、この悪循環を断ち切るための「段階的なゲーム展開」の重要性です。
自分の調子や体の動きに合わせて、戦い方をシフトチェンジしていく。
いきなりトップギアに入れるのではなく、あえてローギアから慎重にスタートする。
この考え方を持つだけで、試合中のメンタルは驚くほど安定します。
「今はまだギア1だから、これでいいんだ」と自分に言い聞かせることが、終盤まで精神的なスタミナを保つ秘訣になります。
第1段階:試合序盤は「ムーンボール」で最高の「打球感」を整える
動画の序盤でもお話ししましたが、私が試合の立ち上がりに強く推奨するのが「ムーンボール」の活用です。
このムーンボールは、単なる「つなぎ」や「逃げ」のショットではありません。
これは、試合巧者が使う、非常に戦略的なショットであり、私自身の「リズム調整用ツール」なのです。
なぜ序盤にムーンボールが有効なのでしょうか。
その最大の理由は、「自分の時間を作れること」、そして「フォアハンドストロークの打球感を整える」ことにあります。
速いボールを打つには、速い準備と速いスイングが求められます。
しかし、ゆっくりとした高いボールを打つのであれば、スイングにも移動にも余裕が生まれます。
体が動かない序盤に無理にスピードを求めず、まずはムーンボールを使ってラリーを続けることで、実際にボールを打つ回数が増えます。
これにより、自然とその日のボールの弾み方、ラケットに当たった感触、コートの距離感といった、試合を組み立てる上で最も大切な「感覚」が、試合中にウォーミングアップされていくのです。
この時期に私が最も意識しているのは、「ミスをしない」こと以上に、「快適な打球感」を得ることです。
ポイント: > ムーンボールは全力で打つ必要はありません。
むしろ、余計な力を抜いて「このくらいの力で振れば、ちゃんと相手コートの深くに落ちるな」という感覚、つまり、自分にとっての「ゾーン」に入るための基準点を探っているのです。
ラリーが続くことで「ミスをしていない」という安心感が生まれ、精神的な焦りが消えていきます。
動画でもお話しした通り、「自分に余裕を出す」ことが、最後まで精神力を保つために非常に大切なのです。
ムーンボールを打つことで、自分は次のポジションに戻る時間を確保し、息を整えることができます。
相手にとっても、高い打点で打たされるムーンボールは、一発で攻め込むのが難しく、意外と厄介なボールです。
まずは「打球感」を確かめ、「これでいける」という自信が湧いてくるまで、焦らずじっくりとムーンボールでラリーを続けてください。
この「準備期間」をしっかり確保することが、後の攻撃の成功率を飛躍的に高める土台となります。
第2段階:体が慣れたら「クロス」の質を上げて相手を動かす
ムーンボールで自分のリズムと打球感が整い、「普段の自分」に近づいてきたら、いよいよ次のステップへとギアを上げます。
この段階で重要なのは、「無理をしない範囲で、相手にプレッシャーをかけ始めること」です。
そこで私が選ぶのが、第1段階で慣れ親しんだ「クロスのコースを維持したまま、ボールの質を変える」という戦術です。
ムーンボールでクロスラリーを続けていたおかげで、クロスへのコースコントロールの感触は、すでに自分の身体にしっかりと染み込んでいるはずです。
その、最も確率が高く、最も安心して打てるコースに向けて、今度はボールの「質」を変えて攻め込んでいきます。
なぜ「クロス」を軸にするのか?テニスにおいて、クロスへのショットはネットが最も低く、コートの対角線上の距離が最も長いため、物理的に「入りやすい」、すなわちミスをするリスクが最も低いコースだからです。
この「最も安全なコース」を使って攻撃する。
これこそが、「無理のない効率的な攻撃」の核心なのです。
具体的には、これまでのムーンボールよりも少しスピードを上げたり、スピン量を増やしてバウンド後に跳ね上げたり、あるいは少し角度をつけて相手をサイドラインの外に追い出すようなショットを混ぜていきます。
戦略的意図: > 私は、打ち慣れたクロス方向に打っているだけなので、ミスをする不安が少ない状態でラケットを思い切り振ることができます。
一方で相手は、同じクロスからのボールだと思っていたら、急に速くなったり、角度がついたりしてくるわけですから、対応に追われることになります。
このクロス攻撃で相手を左右に走らせることができれば、相手の体力はじわじわと削られていきますし、体勢が崩れて甘いボールが返ってくる確率も高まります。
また、このクロス攻めはレシーブの場面でも同様に効果的です。
動画でも触れたように、ラリーの中で攻めるボールの感触が良くなってきたら、相手のセカンドサーブなど、少し甘いボールが来たときに、積極的にクロスへ深く、あるいは厳しく打ち込んでいきます。
無理にエースを狙う必要はありません。
リターンからしっかりとクロスで主導権を握る。
これも、私が実践する重要な戦術の一つです。
この第2段階で、相手に「この人はクロスが得意だ」という印象だけでなく、「クロスのボールが厳しい」「油断するとクロスから攻められる」という強烈な警戒感を植え付けることができます。
相手がクロスを警戒し始めれば、それだけで相手の動き出しは遅くなり、ポジションもクロス寄りになってくるはずです。
ここまでの布石を打つことができれば、第2段階は成功です。
第3段階:クロス警戒を逆手に取る「ストレート」で勝負を決める
さあ、いよいよフィニッシュの段階です。第1段階でリズムを整え、第2段階の徹底したクロス攻撃で相手の意識を完全に「クロス」に向けさせました。
ここまで来れば、ゲームを決めるための最高の切り札が残されています。
それが、私のフォアハンドストロークから放たれる「ストレートへの展開」です。
動画でもお話ししましたが、このストレートは、これまでの布石があって初めて絶大な威力を発揮します。
相手の頭の中は「来るぞ、またクロスだ」「クロスを警戒してポジションを取ろう」という思考で満たされているはずです。
その状況下で、ふと放たれるストレートへのショット。
これは相手にとって、まさに不意打ちとなります。
人間は、予測していないことが起きると反応が遅れます。
たとえそれほどスピードがないボールでも、完全に逆を突かれると一歩も動けなかったり、体勢を崩してしまったりするものです。
「クロスがあるからこそ、ストレートが光る」のです。
ストレートへ打つタイミングは、クロスラリーで相手をコートの外に追い出し、相手の返球が甘くなってコートの浅い位置に入ってきた時が絶好のチャンスです。
あるいは、相手がクロスを過度に警戒してポジションをセンター寄りに修正してきた時も狙い目です。
結果と効果: > 一度でも効果的にストレートを見せておけば、相手は次のポイントから「またクロスか? それともストレートか?」と疑心暗鬼になります。
この迷いが、相手のフットワークを鈍らせ、判断を遅らせます。
その結果、再びクロスに打ったとしても、相手の反応が遅れてエースになったり、ミスをしてくれたりするようになるのです。これこそが、私が目指す「良いスパイラル」に入った状態です。
こうなれば、もう私のコート支配は完成です。クロスに打ってもよし、ストレートに打ってもよし。
どちらに打っても相手は苦しみ、自分は圧倒的に有利な展開を作ることができます。
しかも、ここまで来るのに無理な力を使ってはいません。
確率の高いプレーを積み重ねた結果として、この優位性を手に入れたのです。
動画の補足:私が展開術で最も大切にする「余裕」という名のメンタル管理
動画の中では、技術的な側面にフォーカスして解説しましたが、この展開術の根幹にあるのは、実は「精神的な余裕」と「自己肯定」です。
多くのテニスプレーヤーは、「攻めなければならない」「エースを取らなければならない」という焦りから、自らミスを生み出してしまいます。
しかし、私の展開術は「まず自分を整える」「相手を揺さぶる」というステップを踏むことで、常に自分がゲームをコントロールしているという感覚を維持できます。
たとえミスが出たとしても、「今はまだ第2段階の調整中だから、次はもっと丁寧にいこう」と、冷静に状況を分析し、修正することができます。
一つのミスに一喜一憂するのではなく、長い目で試合全体を捉えることができるのです。
この「余裕」こそが、最後まで高いパフォーマンスを維持し、勝負どころで力を発揮するための最高のメンタル管理術なのです。
まとめ:あなたのテニスを劇的に変える3つの段階
今回、私のフォアストロークを使ったゲーム展開術のすべてを、動画では語り尽くせなかった部分も含めて詳しく解説しました。
大事なのは、この「3つの段階」を理解し、実行する忍耐力と戦略眼です。
- 序盤:ムーンボールで「打球感」と「リズム」を整える。
- 中盤:慣れたクロスへ「スピード」や「角度」を混ぜて相手を動かす。
- 終盤:クロス警戒の裏をかく「ストレート」で勝負を決める。
この流れを頭に入れてコートに立てば、あなたのプレーは今までとは全く違ったものになるはずです。
「次はどうしよう」と慌てることなく、「今はまだこの段階だから」と落ち着いてプレーできる自分に気づくでしょう。
テニスは、ボールを打ち合うだけでなく、戦略と心理戦が交錯する奥深いスポーツです。この展開術をあなたの武器にして、次の試合で無理なく、賢く、そして強かに勝利を掴んでください。
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