こんにちは! 前回の記事『シングルスで勝ち切る!私のフォアストローク展開術』には、本当にたくさんの反響をいただきました。
「試合の入り方が変わった!」「ムーンボールを使うことで、こんなに落ち着いてプレーできるなんて知らなかった」といった嬉しい感想が届く一方で、切実な悩みも寄せられています。
それが、「ムーンボールを使おうとすると、どうしてもボールが浅くなってしまい、逆に相手に叩き込まれてしまう」というものです。
分かります。
痛いほど分かります。
頭では「高く深く」と分かっていても、いざコートに立つとボールはサービスライン付近にポトリと落ち、相手にとっては絶好のチャンスボールになってしまう……。
これでは、「ムーンボール=ただの弱い球」というトラウマを植え付けられるだけですよね。
そこで今回は、前回の「戦術編」に続く「技術編」として、YouTube動画『【テニス】【ムーンボール】浅くなる原因と楽に打つ方法』の内容をベースに、なぜあなたのムーンボールは浅くなるのか、そしてどうすればプロのようにコート深くに突き刺さる「生きたムーンボール」が打てるのかを、徹底的に深掘りして解説します。
動画では語り切れなかった体の使い方のイメージや、試合中に陥りがちなメンタルブロックの外し方まで、余すところなくお伝えします。この記事を読み終える頃には、あなたのムーンボールは「逃げの一手」から「最強の武器」へと進化しているはずです。
目次
なぜ、あなたのムーンボールは「浅く」なってしまうのか?
まず、原因の究明から始めましょう。
あなたはムーンボールを打つ時、どのようなイメージでラケットを振っていますか?
もしかして、「ボールの下から上に擦り上げなきゃ!」と意識しすぎていませんか?
実は、これが最大の落とし穴なのです。
❌ 誤解1:手首や肘だけで「こねる」スイング
ボールを高く上げようとするあまり、手首を急激に返したり、肘を折りたたむようにしてラケット面を無理やり上に向かせようとする動き。
これは、ボールに回転(スピン)はかかるかもしれませんが、前に飛ばすための「推進力」が決定的に不足します。
結果として、回転ばかりがかかった「ヘロヘロした球」になり、ネットを越えた直後に失速して浅く落ちてしまいます。これでは相手にとって、ただの打ちごろのボールです。
❌ 誤解2:「置きに行く」縮こまったスイング
「アウトしたくない」「深く打たなきゃ」という恐怖心から、インパクトの瞬間にスイングを緩めてしまうケースです。
ボールを運ぼうとしすぎて、腕の振りが小さくなり、ラケットの運動エネルギーがボールに伝わりません。
ムーンボールにおいて最も重要なのは、ボールの軌道の高さだけでなく、バウンドした後に相手を押し込むような「伸び」です。
置きに行ったボールには、この「伸び」がありません。
動画でも指摘していますが、中途半端に浅く、勢いのないボールは、相手にとって何の変化もない直線的なボールになりがちです。
これではムーンボールのメリットである「バウンド後の変化」や「相手のリズムを崩す効果」が全く発揮されないのです。
楽に飛ばすための魔法の動作「回旋」をマスターせよ
では、どうすれば楽に、かつ深くて重いムーンボールが打てるのでしょうか。
その答えは、動画の核心部分でもある「腕の回旋動作」にあります。
力はいらない、使うのは「構造」
テニスにおいて「脱力」が大事とはよく言われますが、ムーンボールこそ、まさに脱力が鍵を握ります。
私が動画で解説している「回旋動作」とは、専門用語で言うところのプロネーション(回内)やスピネーション(回外)を含む動きのことです。
難しく考える必要はありません。イメージしてください。
あなたが「うちわ」で自分の顔を扇ぐ時、手首を固めて腕全体をバタバタさせるでしょうか?
違いますよね。
前腕をクルクルと回すようにして扇ぐはずです。
あるいは、ドアノブを回してドアを開ける時の動き。
あれが「回旋」です。
この動きをストロークに応用するのです。
具体的なスイングイメージ
1.テイクバック:
リラックスして構えます。
この時、腕をガチガチに固めないこと。
2.インパクトへ向けて:
ラケットヘッドを一度落としますが、ここからが重要です。
腕の力で無理やり持ち上げるのではなく、前腕を回す動き(回旋)を使ってラケットヘッドを走らせます。
3.フォロースルー:
回旋を使うと、ラケットは自然と下から上へ、そして前方へと抜けていきます。
無理に高い位置にフィニッシュを持っていく必要はありません。
回旋が正しく行われていれば、ラケットヘッドは勝手に高い位置まで跳ね上がります。
この「回旋」を使うと、小さな力でラケットヘッドが加速し、ボールに対して「縦回転(スピン)」と「前方向への推進力」を同時に、しかも効率よく与えることができます。
動画内で私が実演しているように、腕をムキムキにして振る必要は全くありません。
むしろ、腕の力を抜いて、この回旋動作に身を任せる感覚です。
これができるようになると、驚くほど軽い力で、ベースライン深くまでボールが飛んでいくようになります。
片手バックハンドでも原理は同じ
この理論は、フォアハンドだけでなく、片手バックハンドのムーンボール(スピンロブ)にも応用できます。
片手バックハンドの場合、非力な方は特に高いボールを打つのに苦労しますが、これも手首だけで上げようとするから辛いのです。
肩を支点にしつつ、インパクト前後で腕全体を外側に開くような回旋動作(親指側から小指側へ抜けていくイメージ)を使うことで、力強く高い弾道のボールを打つことができます。
動画の[03:59]付近でも触れていますが、ここでも「持ち上げる」のではなく「回す」意識を持つことが、安定した深さを生む秘訣です。
ムーンボールの「質」を高め、相手を絶望させる
技術的な打ち方が分かったところで、次はムーンボールの「質」について考えてみましょう。
単に高いだけのボールと、戦術的に有効なムーンボールの違いはどこにあるのでしょうか。
1. バウンド後の「跳ね上がり」
質の高いムーンボールは、ベースライン付近でバウンドした後、相手の顔の高さ、あるいはそれ以上に高く跳ね上がります。
動画の[01:04]あたりで図解していますが、高い軌道から鋭角に落ちてくるボールは、地面に当たった後もそのエネルギーを維持しようとします。
相手からすると、これは非常に厄介です。
下がるか、ライジングで打つかの二択を迫られる:
ベースライン深くに落ちて高く弾むため、相手は大きく後ろに下がらされるか、難しいタイミングであるライジング(上がりっ端)での処理を強いられます。
力が入りにくい打点:
ほとんどのプレーヤーは、腰から胸の高さで打つのが得意ですが、肩より高い位置で打たされるのは大の苦手です。力を入れにくく、ミスヒットもしやすくなります。
2. 「死んだボール」によるリズム崩し
速いボール同士のラリーは、相手のボールの勢いを利用して打ち返すことができます(カウンターなど)。
これを「生きたボール」のやり取りと呼ぶなら、ムーンボールは自ら勢いを生み出さなければならない、ある種の「死んだボール」です。
ゆっくり飛んでくるボールに対して、相手は自分でタイミングを取り、自分でパワーを生成して打ち返さなければなりません。
これは精神的にも肉体的にも消耗します。
「速いボールの方が楽に返せるのに、こんなフワフワしたボール、逆に打ちにくい!」と相手が感じ始めたら、あなたの術中にハマった証拠です。
これがチェンジオブペース(緩急)の真髄です。
実戦で「浅くならない」ための補足と練習法
ここからは、動画の内容をさらに補足し、実戦で使えるテクニックと練習法を紹介します。
低い打点からは無理をしない
「低い打点のボールをムーンボールにするのは難しい」という現実を知っておく必要があります。
地面すれすれの低いボールを、高い軌道のスピンボールにするには、ラケットをボールの下から急激に擦り上げる必要がありますが、地面が邪魔をしフレームショットのリスクも高まります。
もし相手に低く滑るボールを打たれた場合は、無理にムーンボールで返そうとせず、ネットの少し上を通す丁寧なつなぎ球を選択するか、スライスで対抗するのが賢明です。
ムーンボールは、ある程度高さのあるボール(腰の高さ以上など)を打つ時にこそ、最も簡単に、かつ効果的に打てるショットだと割り切りましょう。
練習法:まずは「アウト」を恐れずに振る
練習コートでムーンボールを練習する際、最初は**「ネットの向こうのフェンスに当てる」**くらいのつもりで大きく打ってみてください。 多くの人は「コートに入れなきゃ」という意識が強すぎて、スイングが小さくなり、結果として浅いボールになっています。
ステップ1:
サービスラインの内側に入ってもいいので、回旋を使って高く、遠くへ飛ばす感覚を掴む。
練習ではアウトしてもOK。
ステップ2:
徐々に回転量を増やしていき、ボールをコート内に「落とす」感覚を養う。
「飛ばないボールを飛ばす」のは大変ですが、「飛びすぎるボールを回転で抑える」方が、テニスにおいては簡単で、かつ質の高いボールになります。
まずはリミッターを外して、回転をかけることから始めましょう。
ダブルスでの応用:スピンロブ
このムーンボールの技術は、そのままダブルスにおける「スピンロブ」として使えます。
相手の前衛がネットに詰めてきた時、慌ててパッシングショットを打とうとしてネットにかけてしまった経験はありませんか?
そんな時こそ、この「回旋」を使ったムーンボールの出番です。
力むことなく、スッと前衛の頭上を越える高い軌道のボールを打つ。
前衛は触ることができず、後衛もカバーに入るのに必死になります。
シングルスでのムーンボール練習は、そのままダブルスの決定力向上にも直結するのです。
「深く打たなきゃ」のメンタルブロックを外す
最後に、メンタル面についてお話しさせてください。
試合中、ボールが浅くなってしまう最大の原因は、実は技術不足ではなく、「心」の縮こまりにあることが多いのです。
「深く打たなきゃ叩かれる」「ミスしたらどうしよう」 この不安が、無意識のうちに腕の筋肉を硬直させ、スムーズな回旋動作を妨げてしまいます。
皮肉なことに、「叩かれないように」と慎重になればなるほど、ボールは浅くなり、叩かれる原因を作ってしまうのです。
では、どうすればいいのか。
私がおすすめするのは、「ターゲットを大きく設定する」ことです。
ベースラインギリギリを狙う必要はありません。
「サービスラインとベースラインの間ならどこでもOK」くらいの気持ちで打つのです。
そして何より、「自分のスイング(回旋動作)を信じる」こと。
「この振り方なら、ボールは勝手に落ちてくれる」という信頼があれば、インパクトで緩むことなく、最後まで振り切ることができます。
試合の序盤、前回の記事でお伝えしたようにムーンボールで様子を見る時も、「相手の様子を見る」と同時に、「今日のリラックスして振れる感覚」を確認してください。
「ああ、これくらいの力加減で回旋させれば、ボールはちゃんと飛んでいくな」という感覚さえ掴めれば、もうこっちのものです。
まとめ:ムーンボールは「技術」である
ムーンボールを「ただつなぐだけの球」「初心者っぽい球」と侮ってはいけません。
今回解説した「回旋動作」を使った打ち方は、あなたが一生テニスを楽しむ上で、身体への負担を減らし、かつプレーの幅を広げるための大きな財産になります。
- 手首や肘でこねない。
- 腕全体の「回旋」を使って、楽に飛ばす。
- アウトを恐れず、リラックスして振り切る。
この3つを意識して、次の練習に取り組んでみてください。
コートの向こう側で、相手があなたの打った高いボールに苦戦し、首をかしげる姿を見るのが楽しみになりませんか?
「浅いボール」への恐怖を克服し、自在に深さをコントロールできるようになったあなたは、もう以前のあなたではありません。
ぜひ、動画も繰り返し見て、そのイメージを目に焼き付けてください。
そして、コートで実践し、その効果を体感してください。
あなたのテニスが、より深く、より高く、そしてより自由になることを、心から応援しています!
ワールドテニススクールでは随時体験レッスンを受け付けています。
道具が無くても気軽に始められますのでよかったらご利用ください。
平日土曜 9時から19時(火曜定休)
日曜祝日 9時から16時
お電話でお申込みができます。
お気軽にご連絡ください。
石井コーチのyoutubeはこちら

石井コーチのInstagramはこちら

ワールドのInstagramはこちら
