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テニス上達のコツ:球出し練習を「上級者への架け橋」に変える思考法

テニスブログ

2026.02.11

なぜ「気持ちいい練習」は上達を妨げるのか?

1. 「やってる感」の落とし穴

球出し練習をしている時、こんな経験はありませんか? コーチや練習相手から、取りやすい場所に一定のリズムでボールが出される。あなたはそれを、大きくダイナミックなフォームで、思い切りハードヒットする。「パコーン!」という快音と共に、ボールはコーナーに突き刺さる。

「よし、今のスイングは最高だった!」 「今日は調子がいいぞ!」

とても気持ちいいですよね。ストレス発散にもなります。しかし、ここに上達を阻む大きな落とし穴があります。それは、「やってる感(充実感)」です。

打ちやすいボールに対して、意図的に大きな動作を加えて派手に打つ。ダイナミックなフォームで打つこと自体は悪いことではありませんし、テニスの醍醐味の一つです。しかし、その「自分が気持ちよくなるための動作」が癖になってしまうと、実戦では命取りになります。

2. 試合とは「不自由」なもの

実際の試合を思い出してください。相手はあなたが打ちやすい場所になんて打ってくれません。走らされ、詰まらされ、イレギュラーし、風に流されます。 そんな「余裕のない状況」で、練習通りのダイナミックな大きなテイクバックやフォロースルーができるでしょうか? 答えはNOです。

中級者が上級者に上がれない原因の一つがここにあります。 「余裕がある時に『最高のショット』を打つ練習ばかりしていて、苦しい時に『及第点のボール』を返す練習をしていない」のです。

球出し練習で「余計な装飾(過度な動き)」を付け足せば足すほど、瞬時の判断が必要な試合本番での「正確性」は落ちていきます。上級者は、この「装飾」を削ぎ落とす作業を徹底しています。

フェデラーが教えてくれた「確率論」という真実

ここで、テニス界のレジェンド、ロジャー・フェデラーが2024年のスピーチで明かした衝撃的なデータをご紹介しましょう。

「私はキャリアで約80%の試合に勝ってきた。でも、獲得したポイントの割合はたったの54%だ」

この言葉の意味、深く考えてみると鳥肌が立ちませんか? あの完璧に見えるフェデラーでさえ、全ポイントの半分ちょっとしか取れていないのです。つまり、テニスというのは相手を圧倒して勝つスポーツではなく、「ほんの数パーセントの差を積み上げて勝つパーセンテージスポーツ」なのです。

1. 「スーパーショット」より「確率」を選ぶ

私たちが目指すべきは、一発逆転のスーパーショットでポイントをもぎ取ることではありません。54%の確率を55%、56%へと、わずかに傾けるための「正しい選択」を続けることです。

球出し練習で毎回エース級のボールを打とうとするのは、確率を無視したギャンブルです。それよりも、少しでもポイント奪取確率が高い選択肢を、瞬時に選び続ける脳を作ること。 ダイナミックなフォームで10回のうち3回エースを取る(でも7回ミスする)選手より、コンパクトな動きで10回のうち9回、相手の嫌なところへ深く返せる選手の方が、最終的に試合には勝つのです。

2. 「強弱」は動きではなく「触り方」で決める

では、どうすればミスを減らしつつ、質の高いボールを打てるのでしょうか? その鍵となるのが、「触り方(タッチ)」です。

ダイナミックな身体の動き(大きなスイングスピード)だけでボールを飛ばそうとすると、タイミングが少しズレただけでホームランやネットミスになります。上級者は、ボールの強弱を「身体の動きの大きさ」ではなく、「インパクトの瞬間の触り方の強弱」でコントロールしています。

  • 中級者の思考: 速い球を打ちたい → 思い切り振ろう!
  • 上級者の思考: 速い球を打ちたい → 厚く捉えて弾き出そう。

この違いです。「動き」に頼ると再現性が下がりますが、「感覚(触り方)」に集中すると、動きは最小限で済み、再現性が高まります。これが「実用的な技術」です。

球出しは「デッドボール」、ラリーは「ライブボール」

練習の質を上げるために、絶対に理解しておかなければならない概念があります。それが「デッドボール」と「ライブボール」の違いです。

1. 性質が全く違う2つのボール

球出し(デッドボール): 死んだボール。回転やスピードが一定で、自分からエネルギーを与えないと飛ばない。

ラリー(ライブボール): 生きたボール。相手の打った回転やスピードが残っており、予測不能な変化をする。

ここが一番の問題点です。多くの人が、この2つを混同して練習しています。 球出し練習(デッドボール)で、自分のパワーを100%使って打つことに慣れてしまうと、いざラリー(ライブボール)になった時に、「飛びすぎる(アウトする)」「振り遅れる」という現象が起きます。相手のボールの勢いを利用することを忘れ、自分から過剰なエネルギーを加えてしまうからです。

2. 球出し練習で「ライブボール」を想定する

では、球出し練習は無意味なのでしょうか? いえ、そんなことはありません。むしろ、特定の技術を磨くには最適です。 重要なのは、「デッドボールを打ちながら、ライブボールを打っているつもりで想定する」ことです。

ただ飛んできたボールを打つのではなく、 「これは相手の速いサーブのリターンだ」 「これは深いスピンボールをショートバウンドで返す場面だ」 と脳内で変換し、そのシチュエーションに必要な「コンパクトな準備」と「正確なタッチ」を使うのです。

身体の使い方 ~「手打ち」の誤解と真実~

「手打ちはダメだ、身体を使え」 テニススクールで耳にタコができるほど聞く言葉です。しかし、この言葉の呪縛によって、逆に調子を崩している中級者が後を絶ちません。

1. 悪い手打ち vs 良い手打ち

まず、誤解を恐れずに言えば、テニスはラケットを手で持っている以上、最終的には「手(腕)」を使います。問題なのは、その「使い方」と「動力源」です。

悪い手打ち: 体幹部の筋肉を使わず、腕の力だけでラケットを振り回すこと。

良い腕の使い方: 股関節から運動がスタートし、体幹を通って、そのエネルギーが最終的に腕に伝わること。

上級者のスイングが「手打ちに見えない」のは、腕がムチのようにしなり、体幹の動きに遅れて出てくるからです。しかし、彼らの意識の中では、インパクト周辺での「手の感覚(ラケットワーク)」を非常に大事にしています。

2. ダイナミックな「手打ち」に注意

ここで注意が必要なのが、「股関節や体幹を使っているつもりで、実は手打ちになっているパターン」です。 いくら膝を曲げても、いくら腰を回しても、そのエネルギーが腕に伝達していなければ、それは「ただ派手に動いている手打ち」です。

むしろ、無駄な動きが多いために打点がブレやすく、中級者にとって最も危険な状態と言えます。 「身体を使う」とは、大きく動くことではありません。「機能的に動く」ことです。 この具体的な身体の機能改善や、悪い手打ちを防止するドリルについては、当ブログの過去記事やYouTubeチャンネルで詳しく解説していますので、ぜひそちらを参考に「知識」として頭に入れておいてください。知識がないと、間違った努力をしてしまいます。

効果的な球出し練習にするための「3つの条件」

ここまでの話を踏まえて、明日からの球出し練習を「上級者への階段」に変えるための具体的なチェックリストを作成しました。 球出し練習を行う際は、以下の3つの条件をクリアしているかを常に自問自答してください。

条件1:ライブボール(ラリー)で再現できる動きか?

「その場なら打てるけれど、走らされたら打てないフォーム」になっていませんか? 球出し練習では、足を止めて踏ん張って打つことができますが、試合ではそんなシーンは稀です。 動きながらでも、バランスを崩しながらでも再現できる、「シンプルで無駄のない動き」であるかどうかを確認してください。

条件2:苦しい状況でも使えるテクニックか?

チャンスボールを叩く練習も必要ですが、それ以上に「守り」の練習に球出しを使ってください。 例えば、球出しの人にあえて遠い場所に出してもらい、やっと届くようなボールを「スライスで深く滞空時間長く返す」練習。あるいは、足元深くに出してもらい、「ライジングで合わせるだけ」の練習。 これこそが、平均値を底上げし、実戦であなたを救う技術になります。

条件3:ショットの平均値の底上げに繋がるか?

10球中1球のスーパーショットではなく、10球中8球入る「及第点のショット」の質を高めることです。 「ネットの2倍の高さを通して、ベースラインから1メートル以内に落とす」 といった具体的なターゲットを設定し、それを無意識レベルで繰り返せるようになるまで反復します。スピードよりも、「深さと軌道のコントロール」に負荷をかけてください。

練習には「負荷」が必要 ~筋トレと同じ思考法~

上達するためには、練習に「負荷」をかける必要があります。 筋トレで筋肉に負荷をかけないと筋肉がつかないのと同じように、テニスも「技術的負荷」をかけなければ技術は向上しません。

1. 準備運動と練習の違い

上記の「3つの条件」が揃っていない球出し練習は、以下のどちらかに分類されます。

型にはめるための練習: 繰り返しによる型の定着

準備運動のための練習: 運動強度弱めのウォーミングアップ

これらが悪いわけではありません。「型にはめる反復練習」は、技術的負荷をかけた後に、その動きを身体に染み込ませる(定着させる)ためには不可欠な工程です。また、「準備運動」も怪我の予防や感覚の確認には必要です。

しかし、もしあなたが「上達したい」と強く願うなら、これらだけで満足してはいけません。 「今の練習は、自分にどんな負荷をかけているのか?」 「これは新しい技術を獲得するための負荷か? それとも定着させるための反復か?」 この目的意識を持つだけで、1球1球の重みが変わります。

2. 「型」とは見た目ではなく「打球感」である

最後に、非常に重要なポイントをお伝えします。 「型にはめる」という言葉を聞くと、多くの人が「肘の角度」や「テイクバックの位置」といった「見た目の形」をイメージします。 しかし、本当に定着させるべき「型」とは、外見のフォームではありません。

はめるべき型とは、「打球感(インパクトの感触)」です。

「股関節から力が伝わり、腕が自然に出て、ボールを厚く捉えた時の、あの重くて心地よい感触」 この「感覚の正解」を脳と身体に記憶させること。これこそが本当の意味での「フォーム固め」です。 見た目のフォームは、その日の体調や相手のボールによって多少変化しても構いません。しかし、この「打球感」だけは、どんな状況でも再現できるようにする。 それが、上級者が持っている「安定感」の正体なのです。

結び:明日からの練習を変えるアクションプラン

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 中級から上級へ上がるために必要なのは、才能でも身体能力でもなく、「本質を見極める目」だということがお分かりいただけたでしょうか。

スピードボールへの執着を捨て、見た目のダイナミックさよりも「実用性」と「確率」を優先する。 球出し練習(デッドボール)の中に、試合(ライブボール)のリアリティを持ち込む。

これは地味な作業です。派手なショットが決まった時の爽快感は少ないかもしれません。しかし、フェデラーが言うように、テニスは54%のポイントを取れば勝てるスポーツです。地味で確実なプレーの積み重ねこそが、最強の武器になります。

全力で打つのをやめ、身体のバランスとインパクトの「触り方」に神経を研ぎ澄ませるのです。最初は物足りないかもしれませんが、それを続けた時、あなたのボールは驚くほど「生きたボール」に変わり、試合でのミスが激減していることに気づくはずです。

上級者への階段は、実はあなたの足元にすでに用意されています。あとは、正しい思考で一歩を踏み出すだけ。 さあ、新しい意識を持って、コートへ向かいましょう!あなたのテニスは、まだまだ進化します。

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