「最近、コートでの一歩目が遅くなった気がする」 「第2セットに入ると、急に足が止まってしまう」 「昔のウェアがキツくなってきた……」
スクールで生徒さんと話していると、技術の悩みと同じくらい、こうした「体型やコンディション」に関する悩みを聞きます。
実はこれ、ラケットのせいでも、練習不足のせいでもないかもしれません。
原因は「食事」にあります。
テニスは、瞬発力と持久力の両方が求められる過酷なスポーツです。
ただ体重を落とすだけの無理なダイエットをしてしまうと、パワーがなくなり、かえってテニスが下手になってしまうことも……。
今回は、私たちコーチが推奨する「テニスのパフォーマンスを上げながら、健康的に引き締める」ための食事法を、最新の科学的根拠に基づいて解説します。
中高年のプレーヤーでも無理なく続けられる内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
1. テニス上達の近道は「食事9割・練習1割」?
「痩せるためにテニスを始めました」という方は多いですが、実はテニスをしているだけではなかなか痩せません。
科学的なボディメイクの世界では、「食事が7割、運動が3割」と言われています。
私たちテニスコーチから見ても、食事管理ができている人は、ケガが少なく、上達のスピードが圧倒的に速いのです。
なぜテニスプレーヤーに「食事管理」が必要なのか
ただ体重を減らす(減量)だけなら、食べなければ痩せます。
しかし、テニスに必要なのは「動ける体」です。
- スタミナ維持: 試合の最後まで走り切るエネルギー。
- 筋肉の維持: 重いボールに打ち負けない体幹。
- リカバリー: 週末のテニスの疲れを月曜日に残さない回復力。
これらを作るのは、全てあなたが口にした食事です。
「ダイエット=我慢」ではなく、「ダイエット=戦略的な栄養補給」と捉え直しましょう。
減量の絶対原則:エネルギー収支
基本はシンプルです。
- 摂取カロリー < 消費カロリー = 痩せる
テニスは1時間で約300〜400kcal(ダブルスの場合)を消費します。しかし、練習後のビールと唐揚げで1000kcal摂ってしまえば、当然太ります。 まずは、今の食事が「消費量を上回っていないか」を冷静に見直すことからスタートしましょう。
2. 動ける体を作る「PFCバランス」戦略
「何をどれだけ食べればいいの?」という疑問に答えるのが、PFCバランスです。 これは、三大栄養素の比率のこと。
- Protein(タンパク質):筋肉の材料
- Fat(脂質):ホルモンバランスや細胞膜の材料
- Carbohydrate(炭水化物):体を動かすガソリン
大人のテニスプレーヤーにおすすめの黄金比率はこれです。
① タンパク質(P):筋肉を守る盾
テニスをした後、筋肉は微細な損傷を受けています。
これを修復し、さらに強くするためにタンパク質は不可欠です。
不足すると、体は自分の筋肉を分解してエネルギーにしてしまうため、基礎代謝が落ち、「隠れ肥満」の原因になります。
目安量: 体重1kgあたり1.2g〜1.6g(体重60kgの人なら72g〜96g)
おすすめ食材: 鶏むね肉、ササミ、マグロ、カツオ、卵、納豆
コーチのアドバイス: 「朝食」でタンパク質が不足しがちです。
朝にゆで卵や納豆をプラスするだけで、1日の代謝スイッチが入りますよ。
② 脂質(F):量より「質」で選ぶ
「脂質は敵」と思われがちですが、関節の動きを滑らかにしたり、細胞を若々しく保つために必要です。大事なのは「油の質」を変えることです。
摂るべき油(オメガ3): 青魚(サバ、イワシ)、アマニ油、えごま油。
これらは炎症を抑える効果があり、テニス肘や膝の痛みが気になる方におすすめです。
控えるべき油: 揚げ物、スナック菓子、マーガリン。
これらは体を「サビ」させ、動きを鈍らせます。
③ 炭水化物(C):ガソリンを抜かない
ここが一番のポイントです。
「糖質制限」のやりすぎは、テニスプレーヤーにとって危険です。
炭水化物は脳と筋肉のガソリン(グリコーゲン)。
これが枯渇すると、試合中の判断ミスが増えたり、足がつりやすくなったりします。
- 選び方のコツ: 白いものより「茶色いもの」を選びましょう。
- 白米 → 雑穀米、玄米
- 食パン → 全粒粉パン、ライ麦パン
- うどん → そば
- メリット: これらは「低GI食品」と呼ばれ、血糖値の上昇が緩やかです。
腹持ちが良く、試合中のスタミナ切れ(ハンガーノック)を防いでくれます。
3. 試合に勝つための「微量栄養素」と水分補給
三大栄養素以外にも、テニス特有の悩みを解決する栄養素があります。
鉄分:後半のバテ防止
「息が上がるのが早い」と感じるなら、鉄分不足(スポーツ貧血)かもしれません。
走る時の着地衝撃で赤血球が壊れるため、ランニング量の多いプレーヤーは要注意です。
- 食材: レバー、赤身肉、カツオ、小松菜、アサリ。
- コツ: ビタミンC(果物など)と一緒に摂ると吸収率がアップします。
カルシウム・ビタミンD:ケガの予防
長くテニスを楽しむためには「骨」の健康が第一。
特に女性は意識して摂りましょう。
- 食材: 乳製品、小魚、きのこ類(ビタミンD)。
水分補給:足つり対策
ダイエット中だからと水を控えるのは自殺行為です。
脂肪を燃焼させるためにも水は必要です。
- 目安: 1日1.5〜2リットル。練習中はスポーツドリンクを薄めたものや、BCAAなどのアミノ酸ドリンクを活用しましょう。
4. リバウンドしない!大人のための「習慣化」テクニック
私たちのスクールでも、ダイエットに成功する人は「気合がある人」ではなく「仕組みを作った人」です。
意志の力に頼らない、脳科学に基づいたテクニックを紹介します。
① 「偽の空腹」に騙されない
「お腹が空いた」と感じた時、それは本当の空腹でしょうか?
ストレスや暇つぶしで脳が勘違いしているだけの「エモーショナル・イーティング(感情的摂食)」かもしれません。
- 対処法: 空腹を感じたら、まず5分だけ待ってみる。またはコップ1杯の炭酸水を飲む。これだけで衝動が消えることはよくあります。
② マインドフル・イーティング(味わって食べる)
早食いは肥満の元です。
テニスのラリーと同じように、食事もリズムと集中力が大切です。
- 実践: スマホを見ながら食べるのをやめる。一口入れたら箸を置き、30回噛む。これだけで満腹中枢が刺激され、自然と食べる量が減ります。
③ アルコールとの付き合い方(ソバーキュリアス)
「練習後のビールが生きがい!」という気持ち、痛いほどわかります(笑)。
しかし、アルコールは筋肉の合成を邪魔し、脱水を招きます。
- 提案: 「飲まない日」を作ってみる。最近は「ソバーキュリアス(あえて飲まない生き方)」が流行っています。ノンアルコールビールや炭酸水に置き換えることで、翌朝の目覚めが劇的に良くなり、朝練のパフォーマンスも上がりますよ。
5. 試合・練習に合わせた食事のタイミング(ピリオダイゼーション)
テニスをする日としない日で、食事の内容を変えるのがアスリート流です。
練習前(2〜3時間前):エネルギー充填
空腹でコートに立つのはNGです。
- おすすめ: おにぎり、バナナ、うどん。
- NG: 脂っこいもの(消化に時間がかかり、体が重くなる)。
練習直後(ゴールデンタイム):急速リカバリー
終わってから「家に帰って食べる」では遅い場合があります。
練習後30分〜1時間は筋肉が栄養を欲している時間帯です。
おすすめ: プロテイン、鮭おにぎり、ちくわ、豆乳。
コンビニですぐに買えるもので構いません。ここでタンパク質と糖質を少し入れるだけで、翌日の疲れが全く違います。
普段の食事:体脂肪を燃やす
練習のない日は、糖質を少し控えめにし、野菜とタンパク質中心のメニューにして調整します。
6. 実践!テニスコーチのおすすめ献立例
「具体的に何を食べればいいの?」という方へ。
コンビニやスーパーで揃う食材を使った、「筋肉をつけつつ脂肪を落とす」1週間のメニュー例
(土日のテニスがある日を想定)を紹介します。
【週末の朝】試合前のパワーチャージ
主食: 雑穀ごはん or もち麦入りおにぎり
ポイント: 食物繊維豊富でエネルギーが持続します。
主菜: 鮭の塩焼き or 納豆オムレツ
ポイント: 良質なタンパク質とアスタキサンチン(鮭)で抗酸化作用を。
汁物: 豆腐とわかめの味噌汁
ポイント: 水分とミネラル補給。
【平日ランチ】コンビニ活用・体脂肪燃焼メニュー
仕事の合間のコンビニでも、選び方一つでダイエット食になります。
メイン: サラダチキン or 焼き鳥(塩)
サイド: ゆで卵 or 枝豆
主食: 梅おにぎり1個 or 蕎麦
野菜: 海藻サラダ(ノンオイルドレッシング)
コーチの裏技: 先に海藻サラダとお茶でお腹を少し満たしてからメインを食べると、脂肪吸収が抑えられます(ベジファースト)。
【平日夜】リカバリー&快眠メニュー
夜遅い食事は太る原因ですが、抜くのも良くありません。
主菜: 豚しゃぶサラダ or カツオのたたき
ポイント: 豚肉のビタミンB1は疲労回復に最強です。蒸す・茹でる調理法でカロリーオフ。
副菜: きのこのソテー、冷奴
主食: 少なめの玄米(または抜いて豆腐を増やす)
7. まとめ:テニス人生を長く楽しむために
ダイエットは、一時的なイベントではありません。
テニスと同じで、「継続すること」に意味があります。
1.「食べない」ではなく「賢く選ぶ」
筋肉を落とさず脂肪を落とすために、タンパク質と良質な糖質をしっかり摂りましょう。
2.テニスの練習を「消費のチャンス」に変える
食事管理をした上でのテニスは、最高の脂肪燃焼運動になります。
3.小さな習慣を積み重ねる
「一口30回噛む」「練習後はすぐにプロテイン」「揚げ物を週1回減らす」。
これだけで体は必ず変わります。
体が軽くなれば、今まで追いつけなかったドロップショットが拾えるようになります。
後半足が止まらず、フルセットを戦い抜けるようになります。
そして何より、テニスがもっと楽しくなります。
まずは今日のご飯から、「自分という選手への投資」だと思って、メニューを選んでみてください。
コートでお会いした時、「動きが変わったね!」と声をかけられる日が来るのを楽しみにしています!
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