テニス愛好家の皆さん、こんにちは。今回は、多くのプレーヤーが憧れ、そして同時に多くのプレーヤーを悩ませているテーマについて深く掘り下げていきたいと思います。
そのテーマとは、ズバリ「片手バックハンドストローク」です。
ロジャー・フェデラーやスタン・ワウリンカのような、華麗で力強い片手バックハンドに憧れてテニスを始めたという方も多いのではないでしょうか。
片手で振り抜くあの姿は、テニスのショットの中でも特に美しい動作の一つです。
しかし、実際にやってみるとどうでしょう。
ボールが飛ばない、振り遅れる、安定しない、といった壁にぶつかっていないでしょうか。
そうした悩みの原因の多くは、実は「スイングが大きすぎること」、つまり「大振り」にあります。
そこで今回は、片手バックハンドストロークを劇的に安定させ、かつ威力を出すための「スイングをコンパクトにする方法」を徹底解説します。
しかも、単なる精神論ではありません。
今回は少し面白い試みとして、最新のAI技術に「テニスの片手バックハンドにおける大振りとは何か」を問いかけ、その回答をベースにしながら「物理的根拠に基づいた理論」で、より実践的な正解を導き出していきたいと思います。
初心者の方から、伸び悩んでいる中級者の方まで、これを読めば片手バックハンドの景色が変わるはずです。
ぜひ最後までお付き合いください。
大振りの定義をAIに聞いてみる
さて、早速本題に入りましょう。
今回のテーマは「片手バックハンドストロークをコンパクトにしよう」です。
コンパクトにするためには、まず「何がスイングを大きくしてしまっているのか」、つまり「大振り」の正体を突き止める必要があります。
最近はビジネスの世界でもAIを活用しないと時代遅れだなんて言われていますが、テニスの世界でもAIの知見を借りてみようと思い、AIに「片手バックハンドストロークの大振りとは何か」と単刀直入に聞いてみました。
すると、AIは予想以上に詳細な分析を返してきました。

AIが指摘した「大振り」の特徴は大きく分けて三つありました。一つ目は「過度なテイクバック」です。
これは利き腕側の肩甲骨周りや背中全体を使ってラケットを後ろに引きすぎたり、ラケットヘッドの位置がネットの高さと比べて極端に上下しすぎたりすることを指しています。
二つ目は「遠回りなスイング軌道」です。
ボールに対して直線的にラケットが出ず、大きく円を描くような軌道になってしまうことです。
そして三つ目は「インパクト後のバランスの崩れ」です。
打つ際に体重が後ろに残ったり、体が開きすぎたりしてフォロースルーが制御不能になることだそうです。
さらにAIは、大振りが引き起こすデメリットについても教えてくれました。
片手バックハンドは両手打ちに比べて体が使える範囲が狭いため、少しの無駄な動きが致命的になります。
例えば、体の回転や体重移動のエネルギーがスムーズに伝わらず非力なショットになったり、再現性が低いために安定感を欠いたりします。
また、振り終わった後の戻りが遅れて次の準備が間に合わなくなったり、手首や肘に余計な負担がかかって怪我の原因になったりすることもあります。
正直なところ、このAIの分析には私もほぼ同意です。
「大振りとは何か」と聞いただけで、デメリットや改善の方向性まで答えてくれるのですから、AIの実力は侮れません。
しかし、ここで重要なのは「現象としての正解」と「感覚としての正解」は必ずしも一致しないということです。
AIが指摘したポイントは確かにその通りなのですが、それをどのように人間の体で、しかもコート上で再現するかという点においては、もう少し深い「テニスの物理」を知る必要があります。
ここからは、AIの意見を検証しつつ、本当に実践で使える「コンパクトな片手バックハンド」の極意をお伝えしていきます。
まずは基本のおさらい
まず、基本的な片手バックハンドストロークの構造から見直していきましょう。
テニスのすべてのショットにおいて共通して重要なのが「テイクバック」です。
ここで多くの人が誤解しているのが「深く引く」という意味です。
テイクバックは確かに「深く」行うことが重要なのですが、これは体を雑巾のようにこれでもかと捻るという意味ではありません。
私が提唱する理論では、片手バックハンドストロークにおけるテイクバックの深さとは、「上腕の外旋(がいせん)」によって作られます。
外旋とは、腕を外側に捻る動作のことです。
この上腕の外旋によって、上腕が胸にピタリと着く状態を作ること、これが本当の意味での「深いテイクバック」なのです。
このとき、前腕まで胸に着けてしまうのは間違いです。
そうすると肩が上がってしまい、肝心の上腕がスムーズに動かせなくなってしまいます。
ですから、前腕は身体の前面、少し身体から離れた位置にあるのが自然な形です。
この形を作るためには、テイクバックの段階で左手を使って、脇を開きながら身体の前方にセットする必要があります。
このポジションが決まれば、準備は八割方完了したと言っても過言ではありません。
ここで非常に重要なポイントをお伝えします。
このテイクバックを行う際、上半身は無理に捻転させないでください。
ここが従来の指導法と大きく異なるところかもしれません。
多くのコーチや教本では「しっかり肩を入れて」「体を捻って」と教えられますが、私がお伝えする方法では、上腕が深くテイクバックできていれば、それだけで十分なのです。
上腕が胸に着くほど深くセットできていれば、自然と体は横向きになります。
さらに、バック側に飛んできたボールを追いかける動作が一歩でも入れば、体は確実に横向きになります。
つまり、必要以上に意識して体を捻る動作を追加しなくても、打つための準備は整うのです。
むしろ、一生懸命に上半身を捻転させようとすることは、スイングを複雑にし、大振りの原因となります。
捻転動作はパワーの源だと思われがちですが、実はパワーの補填にはなりません。
無駄な動作は極力省いたほうが、スイングはシンプルになり、結果としてコンパクトで力強いショットが生まれるのです。
これが「脱・捻転」の考え方です。
パワーの源の概念
では、体を捻らずにどうやってボールを飛ばすパワーを生み出すのかと疑問に思う方もいるでしょう。その答えは「ラケットの切り返し」と「固定力」にあります。
パワーの正体は、ラケットが切り返す際の先端の加速スピードと、高速でボールと衝突する際に生じる衝撃に負けない力です。
ここで言う「固定力」とは、ガチガチに体を固めることではありません。
衝撃に負けないようにするのは「リスト(手首)」のみです。
スイング自体は肩を支点にして動き続けていますから、スイングそのものを止める必要はありません。
実際の動き解説
具体的な動きを見ていきましょう。
テイクバックで外旋し、胸に着いた上腕を、今度は脇を開けながら背中側にスイングしていきます。
すると、動き出しの瞬間に腕は自然と「内旋(ないせん)」します。
ここでラケットヘッドが下がる「ラケットダウン」という現象が起きます。
このラケットダウンは、重力に任せるだけでなく、左手で少しアシストしてあげると、右手の仕事量が減り、無駄な力みを消してくれます。
テイクバックで外旋した上腕が、脇を開けながら背中側に動くことで、肘は自然と上がっていきます。
これにより、意識しなくても勝手に下から上へのスイング軌道が生まれます。
スピンをかけようとして、無理やり腕を上に擦り上げる必要はないのです。
左手のアシストと、右の拳(こぶし)が上に移動することによって、下がっていたラケットヘッドが起き上がってきます。
この「ラケットの起き上がり」と、インパクトの衝撃に備える「固定」のタイミングがピタリと合ったとき、強烈なスピンがかかります。
この起き上がり動作は、テイクバックでの外旋状態から、スイング初動での肩の内旋運動へと変化する際に生まれる「反動」を利用しています。
回旋動作の反動を使えるため、体を捻らなくても十分な力が生み出されるのです。
さらに、この内旋の反動が起きるとき、ラケットは単に下がるだけでなく、進行方向に対して一度「後ろ」に先端が向きます。
そこからグリップを支点として打点に向かって猛加速するのです。
先端が一度後ろに移動してから前に飛び出すという反動を使うことで、凄まじい威力が生まれます。
この「ダブルの反動」の威力を、衝撃に備える力の入れ方で一つにまとめ上げる。
片手バックハンドストロークでボールを飛ばすための物理的な理論です。
この物理現象を理解していないと、一生懸命体を動かして、力づくでボールを飛ばそうとしてしまいます。
それが結果として「大振り」になり、ミスショットを量産してしまうのです。
こちらの記事でも詳しく解説しております
ここで改めて、先ほどのAIの見解を私の理論で検証してみましょう。
AIは「過度なテイクバック」として、背中全体を使って引きすぎることを挙げていました。
これについては、私が説明した「上半身の捻転を行わない」という理論と合致します。
また、ラケットヘッドの位置が高すぎたり低すぎたりするのも良くないとAIは言っています。
これもその通りで、ラケットが必要以上に高くセットされると、左手の肘が上がってしまい、スムーズなラケットダウンができなくなります。
逆に低すぎると、本来外旋すべき右腕が内旋してしまい、深いテイクバックが作れません。
AIの指摘は、物理的にも理に適っています。
次にAIが指摘した「遠回りなスイング軌道」についてです。
これは非常に重要なポイントです。私の理論では、縦軸も横軸も「直線的」にスイングすることを推奨しています。
縦軸については、先ほど説明した通り、意図的に下から上に動かそうとしなくても、肩の動きで自然とそうなります。
問題は横軸です。
多くの人が、ラケットの先端で円を描くように、打点に対して遠回りさせる振り方をしてしまいがちです。
遠心力がついて「振っている感」が得られるため、ついやってしまうのですが、これはNGです。
正しいイメージを持ちましょう。
テイクバックの段階で、左手は身体の前方にあり、右の拳も身体の前面少し離れた場所にあります。
これを真上から見ると、左の拳と右の拳の延長線上に打点があるはずです。
コンパクトなスイングを実現するためには、このライン上をなぞるように、打点まで直線的にスイングする方が圧倒的に効率が良いのです。
遠心力を使ってブン回すよりも、切り返しのパワーを直線的に伝えたほうが、ボールには鋭いエネルギーが伝わります。
ですから、ここでもAIの「円を描くような軌道はダメ」という指摘は正しいと言えます。
三つ目の「インパクト後のバランスの崩れ」についても考えてみましょう。
効率の良い深いテイクバックができていると、胸に付いている上腕を一気に背中側に向かって離すようなスイングができます。
これは背中の筋肉、広背筋を上手に使えている証拠です。
しかし、テイクバックやスイングの途中に無駄な動きがあると、上腕が動かしにくくなり、それを補うためにスイングの初動で無理に身体を動かそうとしてしまいます。
これがバランスを崩す最大の原因です。AIが言う「制御不能なほど」というのは少々大げさかもしれませんが、メカニズムとしてはその通りです。
合わせてこちらに記事もどうぞ
どのようにすればいいか、解決編!
さて、ここからは解決編です。
どうすればこのコンパクトで効率的なスイングを習得できるのでしょうか。
AIは改善ポイントとして「ユニットターンの徹底」や「トップポジションの固定」などを挙げていました。
これらについても、補足を加えておきましょう。
まず「ユニットターン」について。
AIは「体を横向きにする動作で完結させる」と言っていましたが、ここで注意が必要です。
意図的に「体の横向き」を作ろうとすると、どうしても過剰な捻転が入ってしまい、体の一体感(ユニット)が崩れてしまいます。
そうではなく、「捻転せずにテイクバックを終える」ことを意識してください。
上腕を外旋させてセット完了すれば、結果として体は自然な横向きになります。
これが本当の意味でのユニットターンです。
次に「体幹を使う」という言葉の解釈です。
AIも私も、片手バックハンドを安定させるためには体幹が重要だと考えています。
しかし、「体幹を使う」と聞くと、多くの人は腹筋や背筋を使って胴体をグイグイ動かすことを想像してしまいます。
これは誤解です。
「体幹を使う」には二つの意味があります。
一つは、右手を背中側に一気に動かすことによって、体幹部の筋肉である広背筋を使うこと。
もう一つは、踏み込んだ足をつっかい棒にすることによって、バランスを取るために腹部周りの筋肉(赤筋群)を機能させることです。
つまり、体幹は「動かす」ものではなく、体を安定させるために「機能させる」ものなのです。
ここを履き違えると、いつまで経ってもスイングはコンパクトになりません。
プロ選手のフォームには要注意
最後に、プロ選手のフォームについての考え方をお伝えしておきます。
AIは「プロ選手の動画を参考にしよう」と提案していましたが、これには少し注意が必要です。
プロのスイングは、あまりにもスイング速度が速すぎるため、その強烈な負荷を逃がすための独特な動作が入っていることが多々あります。
また、彼らは幼少期からの膨大な練習量によって、感覚的に最適化された動きをしています。
物理的に生じている動きと、彼らが意図して行っている動きは必ずしも一致しません。
それを表面上の形だけ真似しようとすると、理に適わない不自然な動作になってしまう可能性があります。
もちろん、プロの美しく無駄のないフォームを見ることはイメージトレーニングとして素晴らしいことですが、「あの選手があの形になっているから、自分もあの形を作ろう」と形から入るのは危険です。
あくまで、自分の体の構造と物理法則に従ってスイングを組み立てることが上達への近道です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はAIの分析を入り口に、片手バックハンドストロークをコンパクトにするための具体的な方法と、その裏にある理論を解説しました。
大振りを防ぐ鍵は、無理な捻転をやめること、上腕の外旋による正しいテイクバック、そして直線的なスイング軌道にあります。
これらを意識することで、あなたの片手バックハンドは驚くほどシンプルになり、そして力強い武器へと生まれ変わるはずです。
テニスは感覚のスポーツだと言われますが、その感覚を支えているのは物理法則です。
正しい理論を知ることで、迷いが消え、コートの上での景色が変わります。
ぜひ、次回の練習から「コンパクトなスイング」を試してみてください。
最初は違和感があるかもしれませんが、ボールを捉える感触が変わってくるのを実感できるはずです。
あなたのテニスライフが、より豊かで楽しいものになることを心から願っています。
ワールドテニススクールでは随時体験レッスンを受け付けています。
道具が無くても気軽に始められますのでよかったらご利用ください。
平日土曜 9時から19時(火曜定休)
日曜祝日 9時から16時
お電話でお申込みができます。
お気軽にご連絡ください。
石井コーチのyoutubeはこちら

石井コーチのInstagramはこちら

ワールドのInstagramはこちら
