こんにちは! 一生懸命ラケットを振っているのに、なぜかボールが走らない。筋力トレーニングをしているのに、華奢なプレーヤーにあっさり打ち負かされてしまう……。テニスを愛する皆さん、コートでそんなもどかしい思いを抱えていませんか?
この記事は、フォアハンドやバックハンド、ボレーなど、あらゆるショットの底上げに繋がる身体の使い方を解説しています。
「もっと筋力が必要なのか?」「やっぱり自分にはセンスがないのか?」 いいえ、違います。実は、あなたの身体には、今すぐ劇的なスピードアップとコントロールを生み出す「バケモノ」のような潜在能力が眠っているのです。
その鍵を握るのが、テニスにおける究極のテーマ「脱力と固定」です。
「力を抜けと言われても、どうすればいいか分からない」という方に、朗報です。この「脱力と固定」による身体操作の真髄は、実は誰もが日常で経験する「固く閉まった瓶のフタを開ける動作」に隠されているのです。
フタが開かない時、瓶の底や縁をコンコンと叩いて空気を入れるライフハック(警視庁も推奨していますね)もありますが、今回注目したいのは道具や小手先のテクニックではありません。「己の身体の構造だけを駆使して、どんなに固いフタでもいとも簡単に開けてしまう体の使い方」です。
そして驚くべきことに、この「フタを開ける時の筋肉の連動」こそが、テニスのストロークやボレーを覚醒させる「センスの正体」と一致しているのです。
本日は、この身体操作のメカニズムを徹底解剖していきます。 「なるほど、だから自分のボールは威力がなかったんだ!」と、読み進めるごとにコートで試したくてウズウズしてくるはずです。明日からの打球感が180度変わる論理的なステップをお渡ししますので、ぜひコーヒーでも飲みながら、最後までじっくりとお付き合いください!
目次
テニス上達のヒントは日常に!一般男性が魅せた「衝撃の動画」
「己の身体だけでフタを開ける」とはどういうことなのか? まずは、百聞は一見に如かず。こちらのYouTube動画の内容をご紹介しましょう。
この動画に登場するのは、ジムに通って筋骨隆々に鍛え上げているわけでもない、ごく普通の男性です。握力も特別な数値ではなく、ご本人の言葉を借りれば「普通か、普通よりちょいあるくらい」。 それにもかかわらず、彼は「人生で開かなかった瓶のフタはない」と豪語します。実際にゲストが開けることはありませんでしたが、春日さん自力で開けられなかったフタをやり方を聞いて簡単に開けることが出来てしまいす。
一体、彼の身体で何が起きているのでしょうか? 動画内で語ったコツは、非常にシンプルかつ衝撃的でした。
「普通はフタを『ねじる』と思うんですけど、それが良くない」
「両手で瓶とフタを持って、両手の腕の力で、胸の方にグッと寄せる(引き寄せる)んです」
これを聞いた出演者たちは「テコの原理だ!」「全体を使っているんだ!」と驚愕します。 しかし、この動作をバイオメカニクス(生体力学)の視点で極めて論理的に分解すると、筋肉の連動が隠されていることがわかります。
動きの解剖学
彼の動きのポイントを整理すると、以下のようになります。
「握力」は、フタと瓶を【固定】するためだけに使っている。(回すためには使っていない)
腕を引き寄せる際、上腕二頭筋(力こぶの筋肉)の収縮によって「肘が曲がる」。
肘が曲がることで、瓶とフタを「固定」している手が、結果的にフタを開ける方向へ「回転」する。
さらに深く見ると、肘が身体の前方から身体の側(後ろ)に近づいているため、広背筋などの「背中の大きな筋肉」も連動して使用されている。
ここからが、このお話の最大のハイライトです。 この一連の動作において、脳内では「上腕二頭筋を収縮させよう」とか「広背筋を使おう」といった、大きな筋肉に対する意識は一切ありません。
意識はただ一点、「瓶とフタを、握りでガッチリと【固定】する事」だけに向けられているのです。
もしここで、「よし、背中の筋肉を使ってやろう!」「力こぶの力で引いてやろう!」と意識を大きな筋肉に向けてしまったらどうなるでしょうか? 人間の脳のリソース(処理能力)には限界があります。意識を体幹や腕の大きな筋肉という「容量の大きなアプリ」に使ってしまうと、指先や前腕という「小さいけれど重要なアプリ(握力)」に割くための脳内リソースが足りなくなってしまいます。 結果として、フタへの【固定力】が甘くなり、手がツルッと滑ってしまい、力が伝わらなくなるのです。
「末端(手・前腕)で対象を完璧に固定し、大きな筋肉(体幹・上腕)は無意識下で勝手に作動させる」 これこそが、非力な女性でも強烈なパワーを生み出す究極の身体操作の真髄なのです。
筋力に頼らないテニス上達法!「握力(固定力)」という規格外のモンスター
動画から学んだ「手や手首は動かすのではなく、固定するために使う」という法則。 これがどれほど理にかなっているか、数字を使って論理的に証明してみましょう。
皆さんは、自分の「手首を動かす力(スナップの力)」がどれくらいあるか考えたことはありますか?実は、手首をパタパカと動かそうとする力は、人間にとって非常に小さな力しか生み出せません。手首をこねてフタを開けようとしても開かないのは当然なのです。
しかし、手首や指先を「固定する力」となると、話は全く変わってきます。固定力は、人間の身体において「バグ」ではないかと思えるほど、とんでもない数値を叩き出すのです。
データを見てみましょう。
日本の成人男性における「握力」の平均は、約43〜46kgです。
一方で、フィットネスの代表格である「ベンチプレス」を1回持ち上げられるMAX重量の平均は、男性で約40〜50kgと言われています。

…お気づきでしょうか? 筋肉の力(強さ)というのは、基本的に「筋肉の断面積の大きさ」に比例して決まります。 ベンチプレスは「大胸筋」という、人間の上半身の中でトップクラスに大きくて分厚い体幹部の筋肉を使用します。 それに対して、握力は「前腕(肘から手首までの部分)」にある、大胸筋に比べればひも状のような小さな末端部の筋肉を使用しています。
体幹部の巨大な筋肉(大胸筋)と、末端部の小さな筋肉(前腕)。 断面積に圧倒的な差があるにもかかわらず、「平均値がほぼ同じ(40kg台)」という信じられない数値を叩き出しているのです。
もちろん、ボディビルダーのように鍛え込んでいけば、その数値は次第に離れていきます。 しかし、人類の限界である世界記録を見ても、その「規格外ぶり」は健在です。
握力の世界記録(男性):192kg
ベンチプレスの世界記録(男性):355kg
あれだけ筋肉の大きさが違うのに、世界記録で比較しても「2倍にも満たない差」しかありません。 それだけ、人間の「握力(前腕の筋肉による固定力)」というのは、サイズに対して異常なまでの出力を誇る、規格外のモンスターなのです。
こんなに強大な力を、スポーツや日常で利用しない手はありませんよね? 手首は「動かす」のではなく、この規格外の力を利用して「固定する」ために使うのが大正解なのです。
「切り返し」と「固定」が生み出すスピンとスピード
さて、この「瓶のフタ開け」の原理(無意識の体幹稼働)と「握力の異常な固定力」を利用して、スポーツの動作を劇的に向上させる方法をお伝えしましょう。 ここでは、動作のメカニズムを各ショット毎の「飛ばしの理論」を解説していきます。
キーワードは「切り返し」と「固定」です。
魔法その1:デコピンの要素でボールを粉砕する「フォアハンド」
テニスの花形であるフォアハンドストローク。「もっと速い球を打ちたい!」と思った時、多くの人は「筋力をつけよう」とか「身体全体(運動連鎖)を大きく使って押し出そう」と考えます。 しかし、以下の記事で説明している通り、スピードアップの鍵は「動かす」ことではなく「止める(固定する)」こと、そして「反動(切り返し)」にあります。
わかりやすい例が「デコピン」です。 デコピンをする時、指をただ前に押し出しても痛くありませんよね?中指を親指でガッチリと「固定」し、そこに力を溜め込み、親指の固定をパッと外した瞬間の「反動」で弾くからこそ、強烈な威力が生まれます。
テニスのスイングも全く同じです。 ラケットを腕で一生懸命「前へ」振ろうとする(動かす)と、ただの「押し出し」になってしまい、スピードは出ません。 そうではなく、スイングは開始時に「グリップ(手)」から前に動きます。すると、重さのあるラケットの「先端(ヘッド)」は置いてけぼりになり、一瞬「後ろ」に残ります。 この「手が前、ヘッドが後ろ」という物理現象の状態から、手首をガッチリと「固定」し、スイングに「止め」の要素を入れた瞬間……! 後ろに残っていたラケットヘッドが、猛烈な勢いで前方に飛び出してくる(切り返し)のです。 動かそうと頑張るのではなく、打点で「強固な壁」を作るように固めることで、反発係数がMAXになり、筋力のない小さな女の子でもバズーカのようなボールを打てるようになります。
魔法その2:楽に飛んでいく「バックハンドスライス」
「切り返し」と「固定」の原理がさらに顕著に現れるのが、バックハンドスライスショットです。 下記記事で、スライスを進化させる「飛ばしの理論」を解説しています。
スライスが苦手な人は、ボールを遠くへ飛ばそうとして、ラケットでボールを「前へ押して」しまいます。しかし、これではボールは浮くか、失速することが多いです。 コツは、「ラケットを前ではなく、背中側(後ろ)に引く意識で振る」ことです。 「えっ、前に飛ばしたいのに後ろに引くの?」と思うかもしれません。しかし、これこそが「切り返し」を生む極意なのです。
インパクトの直前に、手を一気に背中側へ引こう(引いて止める)とすると、身体の構造上、手は前に出ますが、ラケットヘッドは極端に遅れます。そして、その「引く動作を強く止める(固定する)」瞬間に、ラケットヘッドが急激に前へ切り返し、ボールを「パンッ!」と鋭く弾き出してくれるのです。 自分で前へ力を入れるのではなく、「後ろへ引いて、強く止める」だけで、勝手にヘッドが走り、少ない力で驚くほど伸びるスライスが打てるようになります。動かす強弱ではなく、「止める強弱」でボールをコントロールする。まさに大人の省エネテニスです。
理想のスイングとは何か?
瓶のフタを開ける時、「フタと瓶を固定すること」だけを意識し、結果的に胸や背中の筋肉が「使わざるを得ない状態」になっていました。
テニスも全く同じです。 体幹部の筋肉(大胸筋や広背筋)は、「さあ使おう!」と意識して使うものではありません。 「スタートの構えで、体幹を使わざるを得ない状態にセットし、あとは『切り返し』と『固定(止め)』の力を最大限に利用する」。これが理想のスイングです。 そうすれば、脳の限られたリソースを「ボールとの距離感」や「相手の状況」や「ボールの触り方」に向けることができ、身体は無意識のうちに最も効率的な動きをしてくれるのです。
センスの正体は手打ちの上手さで決まる
ここまで「固定」と「切り返し」の物理的なメカニズムをお話ししてきました。 しかし、「理屈はわかったけど、実際にコートに出ると身体がバラバラになってしまう……」という方も多いでしょう。 「あの人はセンスがあるからできるんだ」と諦めかけたあなたに、朗報です。
下記記事で科学的に証明されている通り、「センス」とは生まれ持った運動神経の良さではなく、後天的に身につけられる「脳の使い方」なのです。
テニスをしている時、私たちの脳には「風の音」「足の裏の感触」「ウェアの擦れ」、そして「肘を曲げなきゃ」「腰を回さなきゃ」という無数の情報(ノイズ)が流れ込んできます。 初心者はこれら全てを真面目に処理しようとして脳がパンクし、動きがギクシャクしてしまいます。
一方、センスが良いと言われる上級者の脳内では「シナプス前抑制」という、いわば「脳のノイズキャンセリング機能」が強力に働いています。 彼らは、インパクトの瞬間の「打球感」や「ボールの軌道」といった最重要情報だけを脳に通し、「肘の角度」や「邪魔な筋肉への指令」といったノイズを完全にシャットアウトしているのです。
「腕全体を固定する」という罠
ここで一つ、非常に重要な注意点があります。 「固定」や「止め」が大事だと熱弁しましたが、「止めて固定するのは【手首だけ】」です。
「よし、固定だ!」と思って、肩から肘、手首までの「腕全体」をガチガチに固めて止めてしまうと、大惨事になります。腕全体の動きを止めてしまうと、意識が「ボールを捉える手先・ラケット面」から離れ、「自分の腕」に向かってしまいます。 すると、脳のノイズキャンセリング機能が破綻し、ボールの感覚(スピード、スピン、コース)を感じ取るための脳のリソースが、自らの腕の緊張によって阻害されてしまうのです。しかも余計に力が入るので不必要な力みになります。
そして、「止める・固める」と言っても、親の仇のように全力でやる必要はありません。 飛んでくるのは、たかが重さ約60gの黄色いボールです。この「60gのボールの衝撃に対して、ラケット面が打ち負けない程度の力加減」で手首を固定できれば十分なのです。 その力加減は、皆さんが想像しているよりもずっとずっと「小さい」ものです。
「脱力」の本当の意味
上級者やプロの選手は、よく「脱力して打て」とアドバイスします。 しかし、初心者がこれを真に受けて「よし、力を抜こう」とフニャフニャになってしまうのは危険です。
テニスに慣れれば慣れるほど、無駄な筋肉への電気信号がカットされ(シナプス前抑制)、必要な時に必要な分だけ力が伝わるようになります。その結果として「力み」の意識が薄まっていくのです。 つまり、「脱力」というのは目指して練習するものではなく、習熟によって力の入れ具合が最適化された「証(結果)」に過ぎません。
ですから、私が強くお勧めしたいのは、最初から「脱力」を頑張るのではなく、「まずは前腕(手首)の固定力を使って、簡単にボールが飛んでいく感覚を得るために、敢えて力を入れてみる」ということです。 「あ、ここをキュッと固定するだけで、こんなに楽にボールが飛ぶんだ!」という成功体験(切り返しと固定の恩恵)を脳に味わわせるのが第一歩です。
フォーム矯正の呪縛から逃れ、「触り方」に集中する
「固定」と「切り返し」の理屈がわかり、脳のノイズキャンセリング機能の存在も知りました。 では、これを統合して、スピード、コース、回転を自由自在にコントロールするにはどうすればいいのでしょうか?
その答えが、下記記事で紹介した「触り方」の極意です。
多くの人が、動画で見たプロの美しいフォームを真似しようとします。しかし、人間の脳は「見た目のフォーム」を再現しようとはしていません。脳が再現しようとしているのは「ラケットにボールが当たった瞬間の、心地よい打球感(触り方)」なのです。
回転(スピン):腕をワイパーのように下から上へ振るから回転がかかるのではありません。ラケットのストリングスが、ボールのフェルトを「噛む」「擦り上げる」という独特の「触り方」をするから回転がかかるのです。この触り方さえできれば、極端な話、棒立ちでもスピンはかかります。
ボレー:大きく振って当てるのではなく、「止めて飛ばす」という「触り方」。ラケット面をボールの軌道にセットし、当たった衝撃だけで跳ね返す感覚です。
バックハンド:無理な体勢で打つのではなく、一番力が伝わりやすく面が安定する「心地よい触り方」ができる打点を探すこと。
フォーム(形)というのは、この「理想の触り方」を実現するために、結果として現れた身体の軌跡に過ぎません。 「切り返し」と「手首の固定」を利用しながら、ボールに対してラケット面をどう入れ、どう抜くか。この「触り方」にのみ100%の意識を向けてください。 すると脳は、「今は手のひらの感覚が一番大事なんだな。邪魔な筋肉はオフにしよう!」と判断し、勝手にノイズを除去してくれます。 結果として、あなたのスイングは無駄な力みのない、流れるような美しいフォームへと「自動的に」変化していくのです。
なぜ私たちは、楽に打てるようにならなければいけないのか?
ここまで、瓶のフタ開けから始まり、握力と体幹の関係、切り返しと固定、脳のノイズ除去、そして「触り方」の重要性についてお伝えしてきました。
最後に、 なぜ、私たちは「楽に、簡単にボールを飛ばせる」ようにならなければいけないのでしょうか? プロのように美しいフォームを見せびらかすためでしょうか?ただ速い球を打って自己満足に浸るためでしょうか?
違います。 テニスは、相手と競う対人競技だからです。
もしあなたが、「腕をどう振ろう」「ここで腰を回して」「力をもっと入れて」と、自分の身体の動かし方(ノイズ)ばかりに脳のリソースを奪われていたら、どうなるでしょうか? ネットの向こう側にいる相手のポジショニング、打ってくる球の軌道、風の向き、試合の状況……これら「勝つために最も重要な情報」に意識を向ける余裕が、1ミリも残らなくなってしまいます。
私たちが「切り返し」と「固定」を利用し、脳のノイズを消し去り、楽に簡単にボールを飛ばせるようになるべき最大の理由は、「意識のベクトルを、自分自身から『局面(相手の状況)』へと向けるため」です。
自分の身体に対する意識(ノイズ)が消え、無意識で極上のボールが打てるようになった時。 あなたの視野は急激に開け、相手の足の運び、呼吸、そして「コートの空間」そのものがハッキリと見え始めます。 「相手の状況に意識が向く方が勝てる」。 これが、すべての技術の到達点であり、スポーツの真理です。
今日から、無理に全身を意図的に動かすのはやめましょう。 瓶のフタを開けるように、手元の「固定」だけに意識を集中し、あとは身体の奥底に眠る「バケモノ(潜在能力)」に身を任せてみてください。 そして、ボールを心地よく「触る」ことだけを楽しんでください。
そうすれば必ず、あなたのテニスは——そして自分の身体との向き合い方は——劇的に、そして最高に楽しいものへと進化していくはずです! 長文にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!明日からのあなたのプレーが、素晴らしいものになることを心から応援しています!
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