テニスのダブルスにおいて、前衛の「ポーチ」はポイントを決めるための最大の武器ですよね。バシッと決まった時の爽快感はたまりません。
しかし、実際のところ「いつ出ればいいのか分からない」「どう動けば正解なのか迷う」という悩みを抱えているプレイヤーは少なくありません。
そこで本記事では、ポーチの成功率を飛躍的に高めるための「ルール化された戦術」、「理想的な動き方」、そして「ペアとの連携のコツ」を徹底解説します。 これを読めば、もう迷いはなくなります。明日からのダブルスの勝率がグッと上がること間違いなしですよ!
目次
1. ポーチの本質と成功のためのマインドセット
まず知っていただきたいのは、ポーチは「技術」や「気合い」の問題ではなく、「知識」の問題だということです。 成功させるためには、まずその本質(仕組み)を正しく理解することから始めましょう。
ポーチが持つリスクと時間的制約の理解
ポーチは、その特性上、どうしても「守りを捨てて攻めに振り切る」プレーになります。
そのため、常にリスクが伴います。
- ストレートを抜かれるリスク: 自分が動いた瞬間、守っていたストレートコースがガラ空きになります。そこを抜かれれば一気に失点です。
- 甘い返球になるリスク: 無理に触っても決まり切らず、逆に相手のチャンスボールになってしまうこともあります。
でも、安心してください。これはあなたが下手だからではなく、「攻めを選んだ代償(必要経費)」なのです。
このリスクを理解し、許容することがスタートラインです。
そして、ポーチには「時間がない」という最大の特徴があります。
ネット際で行うプレーなので、ボールが来てから「出るか、出ないか」と迷っている時間はゼロです。迷った時点で負け。動き出しが遅れてミスにつながります。
ポーチの本質は「ポジショニング」と「ボレー」の組み合わせ
難しく考えがちなポーチですが、その正体は特別なスーパープレーではありません。
「ポジショニング(場所取り)を先に終わらせてしまえば、あとは単なる『ボレー』になる」。
これが真実です。
つまり、「体を移動させる」という作業に全集中し、その後に「ボールを打つ」作業に集中する。
このように難しい作業を分解してあげることで、それぞれの精度が上がります。
極論を言えば、ポジショニングさえ上手になれば、今あなたが持っているボレーの技術だけで、ポーチは劇的にうまくなります。
「打ちに行く」のではなく「体を出しに行く」のが勝負所なのです。
勝敗を分ける「平常心」と「攻めを貫く覚悟」
ダブルスにおいて、ポーチにはメンタル面でのコツが2つあります。
- 攻めを貫く覚悟: ポーチに出たら、そのままネットの前に立ちはだかってください。
「失敗したかも」と後ろに戻るのはNGです。
戻ってしまうと相手の狙うコートが広くなり、簡単に返球されてしまいます。
「まだ攻めてるぞ!」という姿勢が大切です。 - 平常心の獲得: 試合で練習通りの力を出すには「場数(慣れ)」が必要です。
平常心とは、技術をそのまま発揮できる能力のこと。
これがあれば、慌てず、持っている能力をフル活用し、相手が嫌がるテニスを展開できます。
2. 成功率を爆発的に高める「ルール化」戦術(When)
リスクを管理し、「時間がない」という問題を解決するために最強の方法が「ルール化」です。
出るべきシーンをあらかじめ決めておけば、迷う時間をゼロにできます。
ルール化の最大のメリット:迷いなく「フライング」できる
ポーチの動き出しの極意は、相手がボールを打つ前、つまり「フライング」することです。
フライングとは、相手が打つ前に「次はポーチをするんだ!」と決め込んで動き出すこと。
ルールによって「出る場面」が決まっていれば、迷わずスタートを切れます。
これならボールの速さに負けることはありません。
ベストなタイミングは、相手がテークバックを終えてスイングをし始める瞬間です。
ポーチに必ず出るべき3つの特定シーン
では、具体的にいつ出ればいいのでしょうか?
狙い目は、相手が「クロスにしか返せない(ストレートに打ちにくい)」確率が高いシーンです。
以下の3つのルールを覚えましょう。
【ルール1】深く良いボールが相手コートに入った時
味方の後衛が、深くて良いボールを打ち込んだ時です。
相手がストレートに打つのはリスクを負った攻撃です。
リスクが大きい時に攻撃を仕掛ける可能性は低いです。
「苦しいからクロスに来る!」と予測して飛び出しましょう。
これは「ストレートを捨ててもいい場面」なので、ポーチ成功率が格段に上がります。
【ルール2】相手がバックハンドの高い位置で取る時
相手が高めのバックハンドでボールを取らされている時もチャンスです。
ここは力が入りにくく、強いボールを打つのが難しい打点です。
鋭いストレートが来るリスクは低いため、「クロスに来る可能性が高い!」と判断してポーチを狙います。
【ルール3】単調なクロスラリーが3往復以上続いた時
同じリズムのクロスラリーが3往復以上続いた場合、相手の心理は「それしかできない」か「安心して油断している」状態です。
相手のリズムが単調になっている時は、ポーチでその場を乱す絶好のチャンス。
相手が嫌がる展開を作りましょう。
これらは1例に過ぎず、必ず成功するとは限りません。
しかし、ルール化はあなたの「出る回数」を増やし、経験値を積むためのものです。
技術ではなく「知識」で判断をシステム化してしまいましょう。
3. ポーチの理想的な「動き方」とポジショニング(How)
「いつ」が分かったら、次は「どう動くか」です。
ポーチの成功はポジショニングで決まります。
動き出しのタイミング(フライングの極意)
繰り返しになりますが、動き出しは「相手が打つ直前」です。
フライングをすることで、「ボールが来る前に体を出し終わる」という理想が叶います。
このタイミングなら、相手がこちらの動きに気づいても、もうコースを変更することはできません。我々の時間を最大化できるベストな瞬間なのです。
「前→横」の動きの順番と体捌き
よく「斜め前に出ろ」と言われますが、いきなり斜めに動くのは難しい動きです。
おすすめは「前 → 横」の順番です。
- 相手が打つ前に、まずグッと「前」に入る(プレッシャーをかける)。
- その「前に入った勢い」を利用して、「横」に動く。
こうすると、結果的に勝手に「斜め」の軌道になります。「斜めに一気に行こう」とせず、「前に出てから横!」と意識してみてください。
前衛の攻めにおける理想的な立ち位置の微調整
最終的に目指す場所は、サービスボックスの前エリアまで詰めた位置です。 ここで大切なのが、相手の後衛に合わせた微調整です。
- 相手がワイド(外側)にいるなら、自分もワイド気味に詰める。
- 相手がセンター(内側)にいるなら、自分もセンター気味に寄せる。
相手と体を寄せて距離を縮めるイメージです。
前衛は、体(特に下半身!)を使って、ボールのコースをいち早く塞ぐポジショニングが命です。
4. 決定力を高めるポーチの「技術」と応用戦術
いざボールを触る時、難しいことは必要ありません。
ポーチのショットは、極限までシンプルにいきましょう。
当てるだけボレーとコンパクトなスイング
ポーチには時間がありません。
大きな動作やラケットを振る時間はゼロだと思ってください。
「面を合わせるだけのコンパクトなボレー」で十分です。
自分から強く打ちに行かず、面をしっかりオープンコートに向けて作り、当てるだけでOK。
大振りすると、バランスが崩れた時に面がブレてミスになります。
力を抜いて小さく当てる方が、相手のボールの威力を利用できて攻撃力が高まります。
狙うべきコース(アングル/オープンコート)
どこに打つか迷ったら、以下の2つを意識してください。
- アングルをつける: クロス方向に角度をつけることで、相手の意表を突き、決まりやすくなります。
- オープンコートへの追い打ち: 相手ペアがいないスペースに冷静に流し込みます。
ポーチは「相手を動かして崩す」のが目的なので、これで十分効果的です。
【独自戦略】ポーチ後の攻めを貫く意識
ポーチは「一発で決める」だけがゴールではありません。
「ポーチ」と「打たせて取る」はワンセットです。
ポーチで攻撃を仕掛けた後、相手がなんとか返してきた浅いボールを叩く(追い打ち)。
ここまでが前衛の仕事です。
だからこそ、ポーチの後は後ろに戻らず、ネットの前に仁王立ちしていてください。
次のチャンスボールを狙い続けましょう。
5. ダブルスでポーチを活かすための戦術的要素
ポーチを単独のプレーではなく、ダブルスの陣形(戦術)の中で考えてみましょう。
雁行陣における前衛の攻守の動きと役割
基本の陣形である「雁行陣(がんこうじん)」では、役割が明確です。
- 前衛の役割: ネットプレー担当。
「ボレーやスマッシュで決めるぞ」というオーラを出して相手のミスを誘います。
攻める時は「相手のコースを狭める」、守る時は「センターを守る」動きを徹底します。 - 後衛の役割: ゲームメイク担当。
深いショットを打って相手を下げ、前衛がポーチに出るための「時間」を稼いであげます。
センターセオリーとプレッシャーのかけ方
ダブルスの基本「センターセオリー」も活用しましょう。
相手ペアの真ん中(センター)を狙うと、相手は「どっちが取る?」と迷い、ミスが出やすくなります。
また、センターを意識して立つことで、ストレートへの攻撃を防ぎつつ、ポーチに出やすい状況を作れます。
安易なロブを上げさせないよう、前衛がチョロチョロと動くだけでも相当なプレッシャーになりますよ。
試合中の瞬間判断とポジションチェンジ
試合中は「今が攻めか、守りか」を瞬時に判断する必要があります。
- 攻守の切り替え: 「次に相手の『後衛』が打つなら攻め(前へ)」、「相手の『前衛』が打つなら守り(後ろへ)」と割り切りましょう。
これを打つ前に判断しておくのがコツです。 - パターンの確立: 上手な人は「こう来たらこうする」というパターンを持っています。
試合に出て場数を踏むことで、「初めて見る景色」を減らし、慌てない心を育てましょう。 - 滞空時間のコントロール: 苦しい時はロブを使って滞空時間を稼ぎ、体制を立て直すのも立派な戦術です。
6. ペアとの連携とメンタル戦略
最後に、ダブルスという「知的ゲーム」を制するためのコミュニケーションとメンタルのお話です。
ペアの個性を活かした戦術とアシストの意識
ペアそれぞれの「得意・不得意」を理解し合うことも勝利への鍵です。
お互いの役割を明確にし、「自分はペアをアシストするんだ」という気持ちでプレーすると、相乗効果が生まれます。
例えば、後衛がストロークを苦手としているなら、前衛が積極的に動いてカバーしてあげる。
そういった助け合いがダブルスの醍醐味です。
失敗を恐れないメンタルと平常心の獲得
一番大切なのは、失敗を恐れないことです。
ルールに従って全力でポーチに出た結果、抜かれたりミスしたりしても、「仕方ない!」と諦める潔さを持ってください。
- ポジティブな覚悟: 「ミスしちゃダメだ」ではなく、「粘り強くやるぞ、ただでは転ばないぞ」という前向きな覚悟を持ちましょう。
- 緊張との付き合い方: 緊張して体が動かない時は、「綺麗なテニス」を捨ててください。
「どんな形でもいいから相手コートに返す」ことだけをミッションにします。
そして、足をいつもの2倍細かく動かす! これだけで緊張と上手く付き合えるようになります。
まとめ:ルールとポジショニングがポーチ成功への最短距離
テニスダブルスでポーチを成功させる鍵は、特別な才能ではありません。
ポーチを「時間のない強行プレー」だと正しく認識し、相手が打つ前に「フライング」で体を出し、「ポジショニング」を先に終わらせてしまうこと。
これが全てです。
特に、出るべきシーンを「3つのルール」に絞って迷いを捨て、大胆に挑戦してください。
そして、ポーチに出た後も攻めの気持ちを忘れず、ペアと声を掛け合いましょう。
ポーチの技術を磨くのは、「建築の基礎工事」のようなものです。
まず、「いつ、どこに立つべきか(ポジショニング)」という強固な設計図(ルール)を作り、その上で「タイミングよく体を入れる(フライング)」という土台を築く。
この土台さえしっかりしていれば、あとは「当てるだけ」というシンプルな作業で、高い決定力(立派な建物)を実現できるのです。
さあ、次の練習からは迷わず「フライング」していきましょう!
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