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テニス上達の壁?フォーム矯正よりも「打球感」を優先すべき理由

テニスブログ

2025.12.25

テニスの上達に悩むあなたへ贈る、フォームよりも大切な「触り方」の極意についてお話しします。
テニスを練習していて、こんな風に思ったことはありませんか。
動画で見たプロのような綺麗なフォームで打ちたいのに、自分の姿を撮影してみると全然違うとか、素振りでは完璧なフォームなのに実際にボールを打つとバラバラになってしまうといった悩みです。
多くの人が、理想のフォームを追い求めて日々練習に励んでいます。
しかし、実はそのアプローチこそが、上達を妨げている大きな原因かもしれないのです。
今回は、テニスにおいて本当に大切な「ボールの触り方」について、じっくりと深掘りしていきます。
これを読めば、あなたのテニス観がガラリと変わり、壁を突破するきっかけになるはずです。

まず結論からお伝えしましょう。
人間というのは、そもそも見た目のフォームを再現しようとして動いているわけではないのです。
では何を再現しようとしているのかというと、それは「打球感」です。
ラケットにボールが当たった瞬間の、あの感触を再現しようとして、脳が体に指令を出しているのです。
つまり、フォームというのは、その打球感を得るための手段であり、結果として現れる動きの軌跡に過ぎません。
ここを履き違えて、形だけを真似しようとしても上手くいかないのは当然なのです。

フォア・バックストロークの回転量は「腕の振り」ではなく「触り方」で決まる

テニスのストローク、特にフォアハンドストロークやバックハンドストロークにおいて、この考え方は非常に重要です。
例えば、あなたがもっと強烈な回転のかかったトップスピンを打ちたいと練習している場面を想像してみてください。
コーチや動画のアドバイス通りに、膝を曲げ、腰を落とし、下から上へと大きく腕を振り上げる動きを一生懸命練習します。
しかし、実際に打ってみると、ボールは回転がかからずにアウトしたり、あるいは擦れすぎてネットしたりしませんか。
これは、腕や体の動きで無理やり回転をかけようとしているからです。

本当に必要なのは、ラケットのストリングスがボールのフェルトを噛む、あるいは擦り上げるという独特の触り方なのです。
この触り方の感覚がつかめていない状態で、いくらフォームだけを真似して腕をワイパーのように振っても、ボールに回転はかかりません。
逆に、この擦る触り方さえできていれば、極端な話、棒立ちの手打ちであっても回転はかかります。
人間の脳というのは実はとても自分勝手で怠け者な性質を持っています。
脳は、自分にとって気持ちいい、楽だと感じる動作を優先して選択します。
もしあなたが、スライス気味でもパンと弾くような打球感が気持ちいいと感じていれば、脳はその感触を再現するために、何度矯正されても元のスライスフォームに戻そうとします。
逆に言えば、正しい触り方によって、少ない力で楽にボールが飛んでいく新しい気持ちよさを脳に教えてあげれば、脳は喜んでその動きを採用しようとします。
その結果として、自然と理にかなった美しいフォームへと変化していくのです。
これこそが、フォーム改造の正しい手順なのです。

ボレーの決定力アップ!ラケットを「止めて飛ばす」感覚の掴み方

もう少し具体的に、各ショットにおける触り方の重要性を見ていきましょう。
まずはボレーです。
ボレーこそ、まさに触り方が全てと言っても過言ではありません。
ボレーが苦手な初心者の多くは、ラケットを大きく振ってボールを飛ばそうとします。
しかし、ボレーの極意は動画内でも触れられているように、止めて飛ばすという感覚です。
もちろん物理的には、ラケットは完全には止まらず多少動いていますが、感覚としてはインパクトの瞬間にピタッと止める、あるいはブロックするような触り方をすることで、ボールの勢いを利用して相手コートへ返すことができます。

ここで大事なのは、手首をこねたりラケット面を操作したりするのではなく、セットしたラケット面にボールを当てて終わりにするようなシンプルな触り方を覚えることです。
この感覚さえ掴めば、試合中の速い展開でも慌てずに対応できるようになります。
ボレーの練習をする際は、振る動作を極力抑え、ボールが面に当たった衝撃だけで返球するような地味な練習が、実は一番の近道だったりします。

スライスの切れ味もフォームより「ボールの触り方」が鍵

次にスライスについてです。
スライスショットは、ボールの下をラケットが滑り込むような感覚が必要です。
これをフォームから入ろうとすると、多くの人が上から下へラケットを鋭く振り下ろすチョップのような動きになってしまいます。
これではボールにブレーキがかかりすぎて飛ばなかったり、逆に浮いてしまったりします。
また、ラケット面に乗せて運ぶような、あるいは押し込むような感覚では切れ味鋭いスライスを打つのは難しいです。
良いスライスを打つための触り方は、ラケットの切り返しによって止めでボールを叩きます。
「叩く」に少し「抜け感」を加える事でキレと安定が増します。
この触り方を実現するために、結果としてスイングが上から下への軌道を描くのであって、最初からその軌道を目指してはいけません。

バックハンドストロークの安定感を高める打点と触り方の関係

バックハンドについても触れておきましょう。
片手バックハンドでも両手バックハンドでも、打点が体の前になりすぎたり後ろになりすぎたりして安定しない悩みは尽きません。
これも、ここで打たなければならないという位置やフォームを意識するのではなく、一番力が伝わりやすく、かつ面が安定する触り方ができる場所を探すというアプローチに変えてみてください。
そうすれば、自然と足がその場所へ移動するようになり、フットワークも改善されます。

バックハンドはフォアハンドに比べて自由度が低い分、正しい打点で触ることができれば安定しやすいショットでもあります。
窮屈さを感じない、スムーズに力が伝わる触り心地の良いポイントを見つけること。
それが結果として、美しいバックハンドストロークのフォームを作り上げます。

試合の咄嗟の場面でミスを減らす思考法

さて、ここからは実戦を想定した話をしましょう。
テニスの試合というのは、練習とは比べ物にならないほどのプレッシャーがかかり、かつ時間的な余裕もありません。
そんな状況で、肘の角度を何度にして、腰を回してなどと、身体の各部位を意図的に動かしてコントロールしようとしても、まず不可能です。
咄嗟の判断が求められる場面では、意識できることはせいぜい一つか二つ。
その一つを動き方に向けてしまうと、反応が遅れたり、予期せぬバウンドに対応できずにミスをしたりします。

一方で、触り方を軸にプレーを組み立てている選手は、咄嗟の場面に非常に強いです。
例えば、相手のボールが予想以上に深く足元に来たとします。
フォーム重視の選手ならテイクバックが間に合わないから打てないとパニックになるところですが、触り方重視の選手なら、とにかくラケット面をボールの下に入れて、上に擦り上げる触り方だけしようと瞬時に判断できます。
フォームが崩れていても、体勢が悪くても、インパクトの瞬間の触り方さえ間違えなければ、ボールはコートに入ります。
攻めるべきチャンスボールが来た時も同様です。
あそこに打ち込むために腰を入れてと考えるより、ボールを厚く捉えて潰す触り方をするという感覚だけで打ちにいく方が、迷いがなくなり、ミスも減ります。
触り方で強弱、回転、コースをコントロールできるようになれば、実用性は格段に上がります。

僕は「テニスは手打ちで良い」と表現する事が多くあります。
これは「ボールの触り方をメインにテニス技術を構築しよう」という意味です。
腕に負担が掛かるような打ち方を推奨してるのではなく、身体はしっかり機能させながら、触り方の感覚重視の方が実用的だと考えているからです。

効果的な練習方法は?球出し練習の注意点とショートラリーの極意

では、この触り方を磨くためにはどのような練習をすれば良いのでしょうか。
ここで注意してほしいのが、球出し練習の落とし穴です。
コーチや練習パートナーが出してくれる優しいボールは、誰でも気持ちよく打ててしまいます。
時間的な余裕もあるため、余計な動きを加えたり、身体を大きく使ったりと、色々な要素を足し算してしまいがちです。
やりやすい状況だから出来るというのは、実戦ではほとんど役に立ちません。

おすすめの練習方法は、まずは非常に短い距離でのラリーから始めることです。
サービスライン同士、あるいはもっと近い距離でも構いません。
的が近くにあれば、無理に力を入れる必要がなく、リラックスして打てます。
この楽に、狙ったところにいくという成功体験を脳に覚え込ませるのです。
近い距離で、ポンと優しくボールに触れ、山なりの軌道で相手に返す。
この時の手のひらに残る感触、力の入れどころ、ラケット面の角度、ボールの飛び方、これらを丁寧に味わってください。
あ、今の手首の形だと楽に返せたなとか、今はちょっと力の入れどころがズレたなとか、自分の感覚と対話するのです。

このショートラリーで良い触り方が見つかったら、その感覚を維持したまま、少しずつ距離を下げていきます。
ベースラインまで下がっても、基本的にはその楽な触り方を変えないようにします。
飛ばそうとして力んだり、フォームを大きくしたりする必要はありません。
良い触り方さえしていれば、今のラケットとストリングの性能なら、軽く振るだけでボールは十分に飛びます。
もし距離が伸びてミスが増えたら、また距離を縮めて、良い感覚を脳に思い出させてあげてください。
これを繰り返すことで、脳は、この触り方とそれに伴う動きが正解なんだと学習し、無意識レベルで正しいフォームを再現してくれるようになります。

また、あえて苦しい状況を作り出す練習も効果的です。
例えば、相手に攻撃させて厳しいボールを打つ練習や、敢えてギリギリに追いつくよう調整してバランスを崩された状態から返球する練習です。
こうした状況では、綺麗なフォームで打つことは不可能です。
どうすればネットを超えられるか、どうすればコートに収まるか、必死に触り方を工夫するしかありません。
このなんとかして返球するという泥臭い作業の中でこそ、究極の触り方、タッチの感覚が磨かれていきます。

まとめ:脳を味方につけて理想のテニスフォームを手に入れる

最後にもう一度お伝えします。
テニスの上達において、見た目のフォームは結果であり目的ではありません。
目的はあくまで、狙ったところへ、イメージ通りのボールを飛ばすことです。
そのために必要なのは、ラケットワークやフットワークといった動きの前に、インパクトにおける触り方です。
初心者のうちは、どうしても正しい振り方を教わりたがりますし、指導者も振り方を教えがちです。
しかし、そこから一歩抜け出して、今どんな感触だったか、どう触れば回転がかかるかという感覚の部分に意識を向けてみてください。

自分の脳を味方につけましょう。
脳は、気持ちよくて、楽で、成功率が高い動作を好みます。
この触り方が気持ちいいよ、こうすると楽に飛ぶよと、練習を通じて脳に語りかけてあげてください。
そうすれば、あなたの身体は自然と最適な動きを見つけ出し、気づいた時には、誰から見ても美しく、そして実戦で使える理にかなったフォームが身についているはずです。
今日の練習から、ぜひフォーム確認ではなく触り方探しを始めてみてください。
ボールとラケットが触れ合うその一瞬に、テニスの全ての答えが詰まっています。
あなたのテニスライフが、より豊かで楽しいものになることを応援しています。

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