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テニスは「選択」の連続である
テニスを長くやっていると、あることに気づきます。
テニスって、
めちゃくちゃ選択肢が多い。
というか、
毎球、選択させられている。
「どこに返す?」
「どのくらいの高さ?」
「どのくらいのスピード?」
「どのくらい回転をかける?」
「攻める?」
「守る?」
「前に行く?」
「下がる?」
……。
一球打ったら、また選択。
そして、その返球に対して相手も選択。
その結果を見て、また自分が選択。
その繰り返し。
つまりテニスとは、
選択 → 実行 → 結果 → また選択
を延々と繰り返す競技です。
「甘いところに、甘い返球」をしてはいけない
ここで、テニスの非常に重要な原則があります。
相手から甘いボールが来た。
例えば、
・遅い
・浅い
・真ん中
・打ちやすい高さ
・余裕を持って入れる
そんなボールです。
さて、どうするか。
ここで、
「とりあえず入れよう」
と考えて、同じように甘いボールを返す。
もちろん、入ります。
むしろ簡単です。
だからこそ、
ポイントを奪いにくいプレーは、技術的には簡単なのです。
簡単なプレーほど、ポイントは取りにくい
これは少し逆説的です。
「入れるだけなら簡単」
「ミスしないように返すだけなら簡単」
「相手が打ちやすいところに返せば簡単」
でも、それでポイントを取れるかというと、
そうでもない。
むしろ相手にとっては、
「ありがとうございます」
です。
打ちやすい。
判断しやすい。
次のプレーも選びやすい。
つまり、
自分が簡単なプレーを選択した結果、相手にも簡単な選択肢を与えてしまう。
これでは、なかなかポイントを奪えません。
では、難しいボールを打てばいいのか?
ここで、
「じゃあ厳しいところに打てばいいんですね!」
となります。
……まあ、そうなんですが。
これもテニスの面白いところです。
厳しい返球にすればするほど、
当然、技術的な負荷が上がります。
コースを厳しくする。
スピードを上げる。
回転量を増やす。
高さを変える。
相手の時間を奪う。
相手の動きを見て逆を突く。
どんどん難しくなります。
つまり、
ポイントを奪いやすい返球ほど、技術的には難しくなる。
ここがテニスの厄介なところです。
「厳しい=正解」ではない
ただし、ここで勘違いしてはいけません。
厳しくすればするほど良い。
……ではありません。
だって、
ラインぎりぎり!
超高速!
ネットすれすれ!
角度もつけて!
……とやって、
全部アウトしたら、
ポイントは取れません。
当たり前です。
でも試合になると、なぜか人間はやりたくなります。
「今度こそ!」
「ここは攻める!」
「これを入れれば!」
そして、
バーン!
アウト。
相手、
「ありがとうございます。」
こちら、
「……。」
これでは勝てません。
テニスは「ギリギリ」を探し続ける競技
だから、テニスで本当に重要なのは、
「簡単なボールを打つこと」でも、
「ものすごく難しいボールを打つこと」でもありません。
その間にある、
ポイントを奪えそうで、リスクが高すぎない場所。
ここを探し続けることです。
例えば、
「このボールならクロスに打てる」
「この高さなら少し強く打てる」
「相手がここにいるなら逆へ」
「この状況なら前に入れる」
「ここは無理せず深く返す」
毎回、
今の状況で、自分がどこまで厳しい選択をしていいのか?
を精査する。
これがテニスです。
そして、その答えは毎回変わる
ここがさらに重要です。
同じショットでも、
毎回同じ答えになるわけではありません。
自分の状態。
相手の状態。
ボールの高さ。
ボールの速さ。
コートの位置。
スコア。
相手の特徴。
自分の調子。
風。
サーフェス。
全部違います。
だから、
「フォアはいつもクロス!」
「チャンスボールは絶対に強打!」
「浅くなったら必ず攻撃!」
みたいな単純なルールだけでは、試合を戦い切れません。
必要なのは、
その瞬間に最も合理的な選択をする能力。
テニスは、
「正しいショットを覚える競技」
というより、
「その場で正しい選択をし続ける競技」
なのです。
それでも、毎回ポイントが取れるわけではない
ここが、テニスの厳しいところです。
ちゃんと考えて。
相手を見て。
リスクも考えて。
自分の技術レベルも考えて。
「ここなら攻められる!」
という選択をした。
それでも、
ミスすることがあります。
相手にもっと良いボールを返されることもあります。
素晴らしい選択をしたのに、ポイントを取れないこともあります。
当然です。
テニスは、
一回の選択の正しさを競う競技ではありません。
最終的に必要なのは、
ポイントを積み重ねて勝つこと。
7ポイント中4ポイント取ればいい
極端な話をすると、
7ポイントあったら、
4ポイント取ればいい。
全部取る必要はありません。
1ポイント目を落としてもいい。
2ポイント目も落としてもいい。
それでも、
その後4ポイント取れば勝てる。
だから、
「今のポイントを絶対に取らなければ!」
ではなく、
「このポイントでは、どこまでリスクを取るべきか?」
と考える。
取れるポイントは取りに行く。
難しいポイントは無理をしない。
相手が崩れれば攻める。
自分が崩れそうなら耐える。
そしてまた次のポイントへ。
テニスが上手い人は「無茶をしない」
ここでいう上手い人とは、
「すごいボールを打てる人」
だけではありません。
むしろ試合では、
無茶をしない人が強い。
ただし、
「守っているだけ」
とも違います。
簡単なボールを簡単に返すのではなく、
相手から奪えるものは、ちゃんと奪う。
でも、
「ここは無理だな」
と思ったら無理をしない。
この判断を、
毎球、淡々と繰り返す。
これが強い選手のテニスです。
プロ論とは、職人になること
ここまでの話をまとめると、
プロ論とは、単にプロ選手のような派手なプレーをすることではありません。
速いサーブを打つことでも、
強烈なフォアハンドを打つことでも、
毎回スーパーショットを決めることでもない。
毎球、状況を見て、
相手を見て、
自分の状態を見て、
その瞬間に必要な選択をする。
攻めるべきときは攻める。
耐えるべきときは耐える。
取れるものは取る。
無理なものは手放す。
そして、その判断を、感情に振り回されず、淡々と実行する。
これは、職人の仕事に似ています。
職人は、毎回派手なことをするわけではありません。
素材を見て、
状態を見て、
道具を選び、
力加減を調整し、
その場で最も適切な仕事をする。
同じ作業に見えても、
素材の状態や環境によって、微調整を重ねる。
その積み重ねによって、
誰にも真似できない精度を生み出す。
テニスも同じです。
毎球の選択を雑にしない。
簡単なボールを簡単に返さない。
しかし、無謀なリスクも取らない。
自分の技術で扱える範囲を知り、
その中で最大限の仕事をする。
だから、
プロ論とは、職人になること。
派手さではなく、精度。
勢いではなく、判断。
一発の才能ではなく、
毎球の仕事を積み重ねること。
それが、テニスにおけるプロフェッショナルです。
そして、試合に勝った瞬間に何を感じるのか?
では最後に。
そんなテニスをして、
試合に勝ちました。
「よっしゃー!!」
「最高!!」
「俺、強い!!」
……と思うでしょうか?
もちろん、そういう人もいるでしょう。
でも、競技としてテニスをやっている人ほど、
勝った瞬間に最初に出てくる感情は、
案外、
「……終わった。」
だったりします。
そして、
「よかった……。」
です。
つまり、
「安堵」。
なぜなら、テニスは試合中ずっと、
「次はどうする?」
「ここは攻める?」
「これは守る?」
「このボールはどこまで厳しくする?」
「このポイントは取る?」
「次のポイントを考える?」
という選択を迫られ続ける競技だからです。
それを何十ポイント、何百ポイントと繰り返して、
ようやく、
「もう選択しなくていい。」
となる。
だから、
「勝ったー!」
より先に、
「ふぅ……。」
が来る。
これ、
テニスをやったことがある人なら、
ちょっと分かるんじゃないでしょうか。
テニスとは、派手な一球を打つ競技ではない
テニスは、
ナイスショットを何本打ったかを競う競技ではありません。
スーパーショットを決めた回数でもありません。
まして、
「全部のポイントを自分の力で取る競技」
でもありません。
相手のボールを見て、
状況を見て、
自分の状態を見て、
その瞬間にできる、
「一番ポイントを奪いやすく、なおかつリスクが高すぎない選択」
を探す。
そして実行する。
失敗したら、
また次を選ぶ。
成功しても、
また次を選ぶ。
それを、
淡々と繰り返す。
だから私は、
テニスの強さとは、
「すごいショットを打てること」だけではなく、
「毎球、適切な選択をし続けられること」
だと思っています。
そして、その選択を積み重ねる姿勢こそが、
職人としてのテニスなのだと思います。
テニスは「選択」の連続。
簡単な選択をすれば、ミスは減る。
でも、ポイントも奪いにくい。
厳しい選択をすれば、ポイントは奪いやすくなる。
でも、ミスのリスクも上がる。
その間にある、
「ちょうどいい厳しさ」
を探し続ける。
そして、
7ポイント中4ポイントを取ればいい。
だから、1ポイントの失敗に一喜一憂しない。
次のポイントで、また選択する。
それを淡々と続ける。
その一球一球の精度を高め、
自分の仕事として積み重ねていく。
それが、
競技としてのテニスであり、職人としてのプロ論なのです。
そして試合に勝ったら、
思いっきり喜ぶ前に、
まず一言。
「……ふぅ。」
これでいいんです。
テニス、結構大変ですから。
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